松沢呉一のビバノン・ライフ

サイモン・ウィーゼンタール・センターはどこまで信用できるのか—イスラエルの非道を批判することが反ユダヤのわけがない-(松沢呉一)

 

 

なぜ日本国内の問題を米国の一民間団体に委ねるのか

 

vivanon_sentenceこれはいい内容でした。ぜひお読みください。

 

2021年7月29日付「YAHOO! NEWS JAPAN

 

問題になったコントがどういうものか確認していないので、それについては触れないとして、サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)にすぐさま知らせて、判断を委ねるアホな人がいたことについては「何をしてんだか」と思いました。自分で判断すればいいではないか。

志葉玲氏はそのサイモン・ウィーゼンタール・センターは「人権団体」と呼ぶに相応しい団体なのかどうかを問うています。

 

(略)SWCはユダヤ人に対する差別や暴力には抗議する一方で、イスラエルが行っている国際人道法違反は擁護し、イスラエルによるパレスチナ占領等への批判に「反ユダヤ」のレッテル貼りをすることが多々あるなど、シオニズム団体としての活動も目立つ。ヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルなど国や民族に関係なく人権を普遍的ものとして活動する人権団体とSWCとでは、分けて見る必要があるのではないか。

 

これはことサイモン・ウィーゼンタール・センターだけではなく、イスラエルが組織的、計画的にとっている戦略なのだろうと思われます。

※「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」とも言われますが、人物としてはドイツ語読みでジーモン・ヴィーゼンタール、在米の団体としてはサイモン・ウィーゼンタール・センターが適切かと思います。ジーモン・ヴィーゼンタールはセンターの設立には関与しておらず、名前を貸しただけですが、ナチ・ハンターとしてのジーモン・ヴィーゼンタールについての本はすでに買ってあるので、そのうち取り上げると思います。

 

 

イスラエル強硬派に反対することとが反ユダヤと同じわけがない

 

vivanon_sentence残念ながらドイツにもこの傾向は見て取れます。これについては「国家社会主義ドイツ労働者党(NSDAP/ナチ)創立一世紀のドイツで吹き荒れる「反ユダヤ」(カッコつき)の動き」をお読みください。

ドイツとイスラエルの国交が樹立された日を記念して、各地の市役所にドイツ国旗とイスラエル国旗が掲揚されたことに対して、各地でイスラエル国旗が破かれ、焼かれたことを「反ユダヤ」と報じているメディアがありました。今まで見てきたように、ドイツにおける反ユダヤはネオナチよりもムスリムによるものがメインになってきていて、これらの報道は「移民のムスリムが反ユダヤ活動を激化させている」という印象になっています。

その側面は確実にあって、イスラエルに対する怒りをユダヤ人への憎悪に結びつけるべきではないことを強調する必要があるのですが、イスラエルの旗を破いたり、焼いたりする行為はこの時にイスラエルがやっていたパレスチナに対する攻撃に対する抗議であることは明らかであり、私だってあのタイミングでイスラエル国旗を掲げることに対しては唾をかけたいですよ。国旗に唾をかけてもどうになるものではないのでやらないですが。

ドイツのフランクフルトでは、一部のデモ参加者がシナゴーグに向かったために警察に阻止されています。これは適切な措置。しかし、フランスでは左派やアンティファが参加するイスラエルへの抗議デモもまとめて「反ユダヤ」として中止命令が出ています。その中には反ユダヤが混じってくる可能性はたしかにあるのですが、だからといって全面禁止はおかしい。

 

 

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