松沢呉一のビバノン・ライフ

なぜ私の顔ではヘルペスが頻発し、地球では山火事が頻発しているのか—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[1]-(松沢呉一)

 

 

ヘルペスと山火事

 

vivanon_sentenceヘルペスのかさぶたがもう取れたので、マスクなしでも外出できます。今回は皮膚が破れる前に察知して薬をつけたのに間に合わなかったのがショックです。オリンピック期間中にウイルスとの試合に負けるとは屈辱です。

今までの経験上、早くに薬をつけると皮膚が少しふくれて赤くなるだけで済むことが多いのですけど、今回負けたのは歳のせいかもしれない。ヘルペスの症状が出る頻度が上がっていて、以前は年に1回か2回、風邪をひいたあとや睡眠不足が続いた時に出たのですが、最近はとくに理由なく、3ヶ月に1回くらい出ているんじゃないかな。しかも、頬全体が腫れます。前はこんなひどくはならなかったのに。

でも、ヘルペスウイルスを持っているくせに症状が出ない人もいるんですってね。症状が出ないんだったら、体内に潜んでいるだけで、他人に感染させることもないんだと思うんですけど、歳をとると、急に症状が出たりするのかも。じゃないと、なんのためにジッとそこにいるんだって話です。

話は変わって、どこもかしこも山火事がすごいっすね。北米に続いて、今は地中海沿岸です。トルコ、イタリア、ギリシア。ギリシアでは気温が47度を記録。47度を記録したのはアテネではないですが、山火事はアテネ市内に及び、オリンピック発祥の地の景気づけとしてはやりすぎかと。

以下は長いですけど、おもにトルコとギリシアです。

 

 

山だけでなく、村ごと燃えています。犬も燃えたようです。火のスピードが速く、外出先から戻ったら、家もペットも全部焼けていたなんてことが起きています。

原因は気温の上昇と乾燥ですが、それにしても、なんでこんなことになるのか不思議じゃないですか?

地域によっても違うのでしょうけど、おそらく多くの山火事に共通しているのは、たった今だけでなく、長期で水が足りなくなっているってことです。

森が維持されているのは、降雨や地下水によって水分が保たれているためですが、場所によっては降雨量が減っている。あるいは工場用水、生活用水として大量に汲み上げた結果、地下水が枯渇しているために枯れる木が出てきます。また気温の上昇によって、生育できずに枯れる種類もありますし、特定種類の昆虫が増えることでも枯れます。虫害。

枯れる木が増え、さらに気温の上昇で蒸発が促進されるため、森の水分が保たれなくなり、いよいよ木が枯れる。枯れた木は雷が落ちても燃えます。一度火がつくと、あっという間に広がるってわけです。

一見緑に覆われているように見える森でも、下草が乾燥していたり、茂る葉が減っていたり、何本かに1本枯れ木が混じっていて、すでに森は死にかけている場合がありそうです。

一見元気そうに見える私でも、すでに死にかけていることがヘルペスの頻度と程度でわかるのと同じ。山火事が増えている森林も死に近づいているのです。よくはわからんですけどね。

 

 

フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』を読んで諦める

 

vivanon_sentenceこれはフレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ:もはや空想ではない終焉の科学』に軽く出ていた話をアレンジしたものです。ヘルペスのウイルスを持っていても発症しない人がいるというのも、この本に出てました。大きい話から小さい話まで、この本からいっぱい知ったことがあります。

若い頃はよく読んでましたが、最近この手の本はまったく読まなくなってます。「人類は滅亡する」といった脅しめいたものに飽きたのと、滅亡する時は滅亡するので、あがいても無駄であり、とくに先が短い私にとってはどうでもいいからです。

ただ、山火事だの洪水だのが頻発するここ数年の地球の様子を見ていると、「ティッピングポイント(下記参照)を超えたのではないか」とも思えて、それを確認したくなりました。

確認してどうなるものでもなく、期待することなく読んだのですが、爽やかな読後感です。もうジタバタしても意味がなく、その時を待つしかないと達観する気持ちになります。私が生きているうちに、人類の最期を見届けることができるのかもしれない。

この本は「最悪の場合、何が起き得るのか」を想定した悲観的なシナリオに基づく6つのストーリーからなる科学読物です。「スーパーウイルス」「動植物の絶滅」「気候変動」「生態系の崩壊」「バイオテロ」「コンピュータの暴走」です。

全部面白くて、いかにどのジャンルにおいても、この20年か30年、私は新しい知識を入れていなかったのかって話だったりします。

 

 

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