成層圏注入に対する期待と反発—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[9]-(松沢呉一)
「地球工学は人類の救世主になれるのか?—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[8]」の続きです。「まだ少しは地球と人類に希望があるのかもよ—IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の「第6次評価報告書」」と「地中海沿岸・カリフォルニア・シベリアの森林が今も燃えている—フレッド・グテル著『人類が絶滅する6のシナリオ』より[付録]」も併せてお読みください。
世界の天災
洪水や山火事はひとつひとつ取り上げているときりがないので、以下を観ておいてください。
8月8日から14日までの。たったの1週間に起きた世界の災害。南半球は少ないですが、洪水や山火事が起きやすいシーズンではないからだと思われます。
ウィスコンシンの竜巻、デケえな。ロシアやアルジェリアの山火事は、ただ続いているだけでなく、次々と新しい山火事が発生していることがわかります。トルコの洪水も想像以上の規模です。
台湾の台風も大きかったんですね。日本の豪雨も最後にチラッと出てきますが、台風のあとの付録みたいなものです。その付録でも被害は大きくて、各地で「観測史上最大」の記録更新。
ひとつひとつチェックはしていないですが、おそらく多くの場所で「史上最大」の規模を記録し、「史上初」の出来事が起きているのだろうと思います。
こういう映像を観ると、絶望的になりましょう。でも、大丈夫、科学者たちがなんとかしてくれます(これが結論ではないので、最後まで読んでください)。
地球工学による温暖化対策
前回書いた地球工学的対策はざっとこういうことらしいです。
三井住友ファイナンシャルグループ「環境情報誌SAFE」より
三井住友銀行に行くとわかりますが、三井住友グループは本腰を入れて環境問題に取り組んでいます。「杉山」というのはこの記事中に出てくる東京大学未来ビジョン研究センターの杉山昌広准教授。この分野の日本での第一人者みたいです。
これらはそれぞれ別の技術ですが、このうちの成層圏注入はプラスにつけマイナスにつけ、劇的な変化をもたらす可能性があります。
うまくいったらめっけもん
今もおそらくそうなのだと思いますが、『人類が絶滅する6のシナリオ』によると、成層圏注入に対しては反科学派から猛烈な反発をされています。「科学の発展のせいでこうなったのに、まだ言うか」って感じでしょう。
デヴィッド・キースは脅迫もされて警察に通報しています。犯人は捕まったようで、地元の人だったとのこと。キリスト教原理主義の人たちで反対するのは多そうです。「神の領域に手を出すな。神に祈ればなんとかなる」と。なんともならねえよ。
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