松沢呉一のビバノン・ライフ

備蓄癖とコレクター気質—私の強迫性障害傾向[上]-(松沢呉一)

ボツ復活。

納豆とヨーグルトと『マゾヒストたち』の買い占めは許容範囲—ウイルスとウイルス恐怖症に覆われる世界[7]」の続きとして書いてあったのですが、話が逸れすぎなのでカットしました。しかし、その後も「和田アキ子の備蓄癖と私の備蓄癖はおそらく近い—ウイルスとウイルス恐怖症に覆われる世界[6]」はアクセスが続いていて、たぶん世の中には自身の備蓄癖は病気かもしれないと薄々気づいている人たちがいるのではなかろうか。強迫性の強い人が克服する参考になるかもしれないので、別のものを加えて出し直すことにしました。

 

 

同じものをふたつ欲しくなる癖

 

vivanon_sentenceどうせ使うものの備蓄癖については、とくに問題はなくて、むしろ安い時に買っておくので経済的とも言えます。安いと言っても知れているので、たいして得ではなく、マスクの箱買いをして使わないので捨ててしまったように、無駄になることもありますが、トイレットペーパーの買い占めのようなことが起きた時に動じずにリッチな気分で眺めていられるのははっきりとメリットです。

だから、買い溜め行動については改善しようと思ってません。メリットがあるから改善しないのでなく、デメリットがないから改善しないと言った方が近いかな。

しかし、ほっとくと消耗品以外でもやってしまうので、そちらはセーブするようにしてます。

私と同様の人は時々います。ちょっと前に読んでいた本にも出てきました。誰の何の本だったか忘れましたが、森律子だったかもしれない。著者の父親が、同じ物を必ずふたつ買う癖があったと書かれてました。だから、いろんなものがふたつある。

具体的には万年筆が出ていたと記憶します。気に入った万年筆があると同じものを必ずふたつ買うので、万年筆が二本ずつある。あとは忘れました。

気持ちはよくわかります。消耗品じゃなければ、私はやりたくてもやらないようにしますが、それでもたまにやります。

たとえばバーゲンをしていて、欲しいジャケットがあると、ふたつ欲しくなる。片方が着られないくらいにヨレヨレになってももうひとつあります。その安心感が欲しいのです。

現実にはいざ着てみたら、思ったほどよくはなかったりしますし、気に入っても、着潰す頃には飽きてますから、違うものを買った方がいいのですが、色が違ったりするとふたつ買ってしまうことがあります。たまーにですけど。

この時に期間限定のバーゲンであることがその行動を誘発します。「今買っておかなければ」と思わせる。これも「なくなったらどうしよう」と同様の焦りになります。

私の知人でもいました。もう亡くなりましたが、彼も色違いの同じものをふたつ買うのです。高額な靴でも気に入るとそうしていました。

※2020年3月の写真。こういうことがありましたよね。

 

 

過剰な備蓄行動をとるリスさんみたいなもの

 

vivanon_sentenceこの衝動は人によっては強迫観念とは違う人もいそうですが、私について言えば強迫観念です。なくなることが怖い。

トイレットペーパーだってなくなったらなくなったでどうにでもなります。代わりにティッシュペーパーでウンコを拭いて流すと詰まるかもしれないので、東南アジアみたいに紙は便器に捨てず、袋に入れて燃えるゴミに出せばいい。ティッシュペーパーもなければ新聞紙でも雑誌でもいい。こういう時に新聞は役に立ちますけど、昔に比べると新聞も紙質がよくなってますから、拭きにくそうです。

今回のようなパニックが社会に満ちている場合はしばらくそれをやり続けなければならないですが、平常時だったら1回はそれで凌いで買いに行けばいい。

そこに至らずとも、12個入りのトイレットペーパーのパックがひとつ予備にあれば十分です。でも、そこで私は留まらない。だから、私の備蓄行動は根拠があるようで、そんなにはない。不必要な量に至ってしまうのです。私自身、異常だと重々わかっています。

この話をすると気持ち悪がられそうですけど、過剰な備蓄行動をとるリスさんみたいなものだと思っていただければよろしいかと。リスさんも、「もし冬になって餌がなくなったらどうしよう」という強迫観念で過剰に貯め込んでいるのです。

もうお気づきかと思いますが、この性格はコレクター体質の人たちに通じます。私の場合はコレクション癖と備蓄癖ほとんど一致しているかもしれない。持っていることが安心になります。

 

 

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