教室にアンティファ・フラッグを出していて解雇されそうなサクラメントの高校教師—アンティファ・槌鎌・レインボー-(松沢呉一)
アナキズムと槌鎌を併用する共産趣味者か?
山火事が落ち着きつつあるカリフォルニア州の北部、サクラメントにあるナトマス高校のガブリエル・ガイプという教員が、教室にアンティファの旗を掲示し、生徒たちを革命家にすべく、アンティファの活動に参加すると特別単位を出していたとわかって、親たちが猛烈に抗議をして、森に続いて学校が炎上し、ガイプ先生はほとんど解雇決定。
学校の外で、私的時間に左翼活動をしようと右翼活動をしようと自由であって、それによって解雇されるのは不当ですが、カリフォルニア州のガイドラインでは、公立高校でこういう教育はあってはならず、普遍主義をよしとする私は、解雇を不当とする署名用紙が回ってきても署名しません。
また、教員じゃなかったとしても、この人物の主張内容には賛同できません。
生徒が提供しているのだと思いますが、この騒動が起きてから、ガイプ先生が教室で語っている動画や教室内の様子を撮った写真が公開されています。
よくもここまで放置されてきたものです。
毛沢東の肖像画があり、レインボー・フラッグ(このタイプのレインボー・フラッグについては下の方↓で説明してます)もあり、サパティスタ民族解放軍のポスターも見えます。
サパティスタ民族解放軍はリバタリアニズムの系列なのでわかるとして、スターリンや金正恩のスタンプを学校で使っていたとも報じられています。また、この件を最初に問題にしたグループは、路上でのインタビューを試みていて、ガイプ先生はほとんど答えずに足早に去っていくのですが(この動画も公開されている)、その時は槌鎌のタンクトップを着ています。
アンティファは統一的な思想や組織はないながら、統一しない考え方自体がアナキズムやオートノミズム(アウトノミア/アウトノーメ)の影響下にあります。そのことはしばしば彼らがアナキスト・マークを出していることでもわかります。
前から指摘しているように、アンティファ・フラッグの始まりはおそらくドイツ共産党で、その当時のまま、共産主義者のアンティファもいるでしょうが、何百万人も殺しているスターリンや毛沢東を崇拜し、北朝鮮までを肯定するような人はあんまりいないかと思います。アナキズムと独裁は相入れない。
ガイプ先生はそれっぽいものを無節操、無見識にかき集めているだけの共産趣味の人ではなかろうか。カタルーニャの一部パンクやヒップホップに通じます。パブロ・ハーゼルはアナキズム否定だと思われますが、多くのミュージシャンにとってアンティファもアナキズムもコミュニズムも雰囲気もんの記号です。
現在もっとも目立つ左翼はアンティファなので、ガイプ先生のように、スターリニズムも中国共産党も肯定する人まで集めてしまっているのかもしれない。アンティファの定義も各自決定ですから、間違っているとは言えないでしょうけど、さすがにここまで至ると間違っていると言っていいんじゃないか。
民主党やバイデンをも否定するアンティファ
昨年、バイデン大統領が就任するや否やアンティファ・グループがポートランドの民主党事務所を襲撃するなど、各地で暴れてました。私にはまるで共感がないですが、理解はできます。「反トランプ・反共和党だからと言って、バイデン支持でも民主党支持でもない」というアナキスト的意思表示。
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