貧困・食糧危機・水不足・紛争・環境破壊の根底にある問題を見据える—教育(とくに女子教育)の意義-(松沢呉一)
「ここ半世紀でケニアが大きく変わった点—マゴソスクールの卒業生たちのプロフィールを読む」の続きです。
インドは人口抑制の手本と言っていい国
人口の急増はあらゆる点で負の効果を招きます。教育を受けられない子どもたちを増加させる。貧困層を拡大する。その層は医療を受けられず、若年層の死亡が増える。食糧生産が追いつかず、農地を拡大するために森林伐採をする。土地、水、食糧の確保のための紛争が起きる。
「人口増加」「人口爆発」といった言葉を聞くと、私らの世代はインドやバングラデシュなどの南アジアを思い浮かべるのですが、インドは早くから政府が積極的に人口抑制に取り組んで、現在の人口増加率は1パーセントを切ってます。母数が多いので、なお毎年多数が増え続けていて、まもなく中国を抜きますけど、人口抑制の手本の国と言っていいでしょう。
中国では、一人っ子政策を国民に強いて、それに反すると人工中絶するしかありませんでした。1971年の一人っ子政策導入(厳格な一人っ子政策は1979年から)から40年間で3億3千万件の中絶手術が実施されています。こんなことができるのは強権的な全体主義国家だけです。民主主義国家ではそうはいかないので、多くの場合、長い時間を要します(実のところインドでも他の選択肢があるにもかかわらず、卵管結紮などの不妊手術を実質強いていた時期もあるらしいのですが)。
以下は1人の女性が生む子どもの数が6人以上から3人以下になるまで何年かかるのかを示したものです。
「Our World in Data」より「Fertility Rate(出生率)」
もっとも時間がかかっている英国は95年。もっとも少ないイランは10年。イランは中国の11年を上回っていて、強制力ではなくこれを実現した稀有な国です。
時間がかかった国の上位はすべて19世紀のことであり、時間がかかっていない国は比較的最近であるのは、時代があとになるほど、「子どもが多いことは人類にとって、国家にとって、コミュニティにとって、家族にとって、子ども本人にとっていいことではない」という認識が浸透したということもありますが、時代があとになるほど、人口抑制に人為的な力が働くようになったことを示しています。
人口増加率・出生率の高いのは圧倒的にアフリカ諸国
前回見たように、ケニアの人口増加率のピークは1985年の3.9パーセントでしたが、今はこれと同じ人口増加率の国はすでにどこにもありません(ニジェールが近いですが)。
「worldometers」より2021年度の人口増加率の上位国
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