天安門事件をなかったことにしたい「恥の国家」—ノーベル平和賞と中国共産党-(松沢呉一)
ノーベル平和賞の意図をよく理解している中国共産党
「今年のノーベル物理学賞は重要、平和賞もまた重要—マリア・レッサとドミトリー・ムラトフ」で書いた本年のノーベル物理学賞と平和賞に込められたメッセージについては、各メディアが当然のごとく解説しています。
とくに平和賞については、受賞者自身がその意味を理解した上での発言をしています。
マリア・レッサは「この受賞は私に与えられたものでなく、すべてのジャーナリストに与えられたものだ」といった発言をしていますし、ドミトリー・ムラトフは「殺された同僚たちに与えられるべきものだ」と言っていて、ありきたりの謙遜を口にしているに過ぎないとも言えますが、ノーベル賞委員会の意図を読み取ったもののように私には見えました。
すでに見たように、「誰を候補として選択するか」が香港の民主化運動やメディアでは難しかったのかと思うのですが、今回の平和賞の潜在的対象には確実に香港の民主化運動やメディアも入っていましょう。
その意図を正確に察知していたのが中国共産党です。
2021年10月9日付の「毎日新聞」によると、ノーベル平和賞についての速報は削除されて、主要メディアは報じていないとのこと。
検索してみたところ、政府系ではない国内メディアの報道は削除されずに残っていますが、詳しいことは書かれておらず、マリア・レッサとドミトリー・ムラトフがなぜ受賞したのかさっぱりわかりません。これが中国でギリギリ許される範囲なのでしょう。
※2021年10月8日付「sina新聞中心」 シナ・コムは政府系ではないですが、政府寄り独立メディアというべきスタンスかと思います。
ジャーナリズムを徹底的に潰す方向を打ち出した中国共産党
それでもロシア政府はドミトリー・ムラトフのノーベル賞受賞を称えるコメントを出していますが、同日発表された以下の姿勢が中国共産党の回答です。
2021年9月9日付「時事ドットコム・ニュース」
シナ・コムも政府系に組み込まれるか、解体させられるのかも。
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