松沢呉一のビバノン・ライフ

殺されるかもしれないのに発言する人・金儲けをするために黙る人—夢で見た「朝日新聞」の社説を再現する-(松沢呉一)

 

斬首されるかもしれない。それでも発言する

 

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アフガニスタンの取材はTBSが抜きん出ています。中東支局の須賀川拓記者の担当です。

以下の「報道特集」は、今までの取材を編集し直し、かつ新規の映像を加えた内容で、タリバン以前から干ばつによって農村は疲弊していたこと、タリバン以降、生活はなおのこと困窮し、9割以上の人が十分な食事もできなくなっていること、とくに子どもらにその皺寄せが来ていることなどがよくまとめられています。

 

 

これは遠くの国で起きている遠い不幸なのではなく、世界の未来です。

この中でジャーナリストでもなんでもないバーミヤーンの市民が、タリバンに殺されるかもしれないとしつつ、「言論の自由がある」としてタリバン批判をしていることに感服しました。言論の自由は与えられるものではなく、予め存在している権利なのだとの信念がある人なのでしょうが、同時にあとがないってことかとも思いました。

十分に生活ができていて、こんな発言をしたらその生活が消滅する環境下ではまた違ってきそうです。中国の国民の大多数が黙っているように、あるいは日本に来ている中国人も数字を歪曲した上でマスコミ批判をして、表現の自由がない中国を礼賛してみせるように。そして、中国相手に商売をしている日本人たちもゼニのために黙りこくるように。

 

 

夢で見た「朝日新聞」の社説

 

vivanon_sentence土曜日に千駄木「ふくの湯」に行って体調が悪化して、そこから寝込んで、翌日曜日も「ビバノン」の更新以外、ほとんどの時間をしている寝て過ごしたのですが、その際に、「朝日新聞」が素晴らしい社説を出したのを読む夢を見ました。

COP26の結末を踏まえたのでしょうが、地球温暖化を止めることは無理だと結論づけ、その理由を解析した内容でした。つまり、確実に人類は滅びることを前提にしているのです。その上で、人間は「人類が滅びることより、自分の生活が豊かになることの方が大事」なのであり、この特性が地球温暖化を進めてきて、かつ、この特性が問題の解決を困難にしたのだと社説は言います。

さらにこの社説では、中国の暴走を西側諸国が押さえられなかったのもこの特性によるものだとしていました。中国と仲よくしておけば金が儲かると考えた人々が中国共産党を批判することを放棄してしまったのだと。

 

 

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