松沢呉一のビバノン・ライフ

「バカ頭」は迷惑な上に自分も損をする—「ラーメン頭」の考察[中]-[ビバノン循環湯 608] (松沢呉一)

ラーメンを食べようと決めた時はうまい寿司よりまずいラーメンを食った方が満足度が高い—「ラーメン頭」の考察」の続きです。

図版は食い物に関するものを適当に撮ってきたもので、それぞれとくに深い意味はなし

 

 

 

「ラーメン頭」をコントロールする

 

vivanon_sentence前回見た通り、客は自分自身の欲望をしっかり見極め、店の売りをしっかり把握することが大事。

「ラーメン頭」で寿司屋に行き、寿司が出てくるや否や、「なんだよ、寿司かよ」なんて言えば、「お客さん、ラーメンが食べたいなら、ラーメン屋に行ってくれ」と追い出されて当然だ。「ああ、口の中でとろけるようなチャーシュー、歯ごたえのある麺、コクのあるスープはいいよなあ」なんて考えながらトロやウニを食ったってうまいはずがなく、なによりこれでは自分が損をする。

もしどうしても寿司を食うしかなくなったなら、いち早くラーメンのことを忘れて「寿司頭」に切り替えることだ。

同様に、パイパン専門店に行くなら、「パイパン頭」、巨乳専門店に行くなら「巨乳頭」、熟女専門店に行くなら「熟女頭」にしていった方がいい。パイパンのコの方が多いのだから、「陰毛頭」で行ったのでは、パイパンのコが出てきて、「なんだよ、毛がないじゃないか」と失望することになり、これでは店に対しても女のコに対しても失礼だ。 「本番頭」でヘルスに行って、本番しようとして断られたら、損した気がする。だったら「口内発射頭」「素股頭」「手こき頭」でヘルスに行って、サービス内で楽しんだ方が満足度が高い。

もちろん、なーんにも考えずにフラリと行くのも手であり、私はそうすることの方が多いんだが、間違っても、その店で得られないことで「頭」を作らないことだ。

店側もまた決して自分の店では得られないことを売りにすべきではない。パイパンが一人しかいないのに、「パイパン専門店」と銘打ってはいけない。

吉原の高級店に行って6万円を出す。客は満足する。数日後、その客が1万円ポッキリのはずの格安店に行ったら6万円ボッタクられる。ボッタクられながらもやることはやってくれる。吉原にそんなソープはないわけだが、ここでは仮想である。相手の女のコは昨日まで高級店にいて、サービスも高級店とまったく一緒なのに、ボッタクリはやっぱり腹が立つ。「1万円頭」だからだ。

 

 

「バカ頭」を脱すべし

 

vivanon_sentence店は客が何を自分の店に対して期待して、どんな「頭」を作ってくるのかをしっかり把握しておかなければならず、これを裏切るようなことをすると、客は失望する。

ところが、値段に合った適正なサービスを提供しているのに怒る客がいる。格安店に行くんだったら、「一般に高級店の方が若くていい女がいて、教育が行き届いているからサービスもよく、個室もきれいで、プレイ時間が長い高級店に行きたい。でも安月給のオレにはとても行けない。だから格安店に行く。オレみたいな貧乏人でも1万円払えば遊べる。それだけでも素晴らしいことだ」と「格安店頭」で行けば失敗はなく、格安店でサービスのいいコに出会えた時の感激はひとしおだ。

なのに、この社会の経済原理を理解せず、自分の立場も理解せず、1万円で芸能人並のルックスをした18歳のソープ嬢がこの世のものとは思えないサービスをしてくれると思いこむ「バカ頭」がいる。そもそもこいつは吉原では18歳はいないという事実さえ理解してない。 「あの店に行ったら、ババアが出てきて最悪だった」なんてネットに書き込む。

格安店に行っておきながら、こういうことをネットに平気で書く「バカ頭」が本当にいるらしい。経験を積み、1万円の格安店とはどういうところなのか、女の魅力とはなんなのか、自分が如何に金がないのかをわかっていれば、「歳はとっているが、素晴らしい熟練のテクを堪能できた」とか「気だてのよさに至上の60分を過ごせた」ということにだってなったかもしれないのに、「バカ頭」は自分自身に問題があることにも気づかない。これはつまらんし、人を傷つけさえする。

 

 

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