戦争を批判するロシア人、黙っているロシア人に難癖をつけるのはやめるべ—小原ブラスを見かけた夜に改めて思ったこと-(松沢呉一)
「ロシアの独立系テレビ局TVレイン最後の放送—日曜日の新宿とロシア」の続きです。
小原ブラスを見かけた夜
銭湯でイラン人と話した2日後のことです。午後11時頃だったと思います。たまーに行く銭湯の露天風呂を堪能したあと駅に向かっていたら、向こうから男が歩いてきて、コンビニに入りました。ピロシキーズの小原ブラスでした。
マスクをしてましたので、確信まではないですが、まず間違いないと思います。中身は日本人でもあの見た目ですから。
あの辺に住んでいるのか、何か用事があったのか、銭湯巡りをしているところだったのか、どれか知らないですが、便利っちゃ便利でありつつ、不便ちゃ不便な場所です。
でも、あの辺はゲイ人気が高いはずです。納得しました。
ロシア人とわかる見た目が有利に働くこともありましょうが、今の時期はロシア人であることを気にして肩身の狭い思いをしている人が多そうです。
彼は堂々とプーチン批判をしていますが、誰もができることではなくて、BBCでさえも活動停止しなければならず、独立系メディアの砦だったTVレインは放送を停止し、「戦争反対」と口にすることがはばかられる社会になったロシアの現状を知れば、日本にいるロシア人たちの多くは祖国に対する嫌悪や失望を高めつつも、プーチン批判をするのが怖くなるのは当然です。もともとロシアは法を超えて民間の制裁が加えられ、時にそれは死であることが怖かったのですが、公式の刑罰がそれに近づきました。
日本はそれでもまだいい。ロシア大使館が監視していましょうし、スパイもいましょうけど、在日ロシア人の数が少ないので、監視の目が弱い。ヨーロッパだとロシア系移民の数が多く、プーチン支持者も多いので、日本以上にロシア政府批判はためらうかも。日本でも中国人に対する中国人の監視が厳しいのと同じ。
それに比べればマシとは言え、日本にいるロシア人に意見表明を求めるのがどれだけ過酷なことか理解した方がいいと改めて言っておきます。
※日曜日の新宿駅南口の集会で出ていたプラカード。ウクライナカラーになっていて、きれいなデザインですが、May God bless Ukraineというコピーはどうなんだろう。これまでロシアやポーランドを例に見てきたように、東ヨーロッパでの民主運動にとってキリスト教(正教会やカトリック)はしばしば民主主義と対立する存在です。ウクライナは国全体としてクリスチャンが少ないですが、民主運動側にもクリスチャンはいるでしょうから、一律にキリスト教を否定する人ばかりではないと思いますし、常套句ですから、いちいちあげつらうようなことでもないのですけど、この文字までを含めて私が肯定しているわけではないことを念のために書いておきます。
関心のないことを尊重する
「プーチン支持、戦争肯定」の人がいたら叩いていい。「プーチン批判、戦争反対」の人は褒め称える。黙っている人はほっとく。ってルールを確立したい。
このルールは日本人でも同じで、私は今ウクライナとロシアのことで頭がいっぱいですが、こんな時でもくだらないことばかり考えている人もいますよ。そんな人たちに「お前はどう思うんだ」と意見表明を強いるのはうざいべ。
こんな時でも私自身、陰毛や脇毛について思いを巡らせていることはあるわけで、100パーセントの人が100パーセント戦争のことを考えていなければならないのは息苦しい。それこそ全体主義。
なーんも考えていそうにない人が、家に帰るとアノニマスの活動をやっていて、ロシアのテレビをハッキングしているかもしれないんだしさ。すげえな、アノニマス。
このページの右肩のランキングを見ていただくとおわかりのように、更新から時間が経っても「古塔つみは自身の才能を正確に自覚してイラストを描いていればよかったのに—パクリのおかげで知ったギタリストGyoshi(ギョシ)が新しい学校のリーダーズとつながる面白さ」へのアクセスが続いています。
古塔つみのパクリは興味を抱く人が多いネタなのに、テレビや新聞が扱わないので、浸透するペースがゆるやかで、消費され切らずに関心の拡大が持続されているのだろうと思います。とくにあの回は面白い内容だったと私自身思いますし、後半はあまり指摘されていない重要なポイントだと思います。
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