松沢呉一のビバノン・ライフ

戦死者数・市民の虐殺数・ナチス度・衣装代のどれをとってもゼレンスキーよりプーチンの勝ち—逃げて闘うのもまた尊い-(松沢呉一)

戦死者数を9,861人と報じてすぐさま消したロシア政府系メディア—ロシアが戦死者数を伏せるもうひとつの理由」の続きです。

 

 

 

もはやロシアでの平和的反戦運動は不可能に近い

 

vivanon_sentenceロシアの反戦の動きについてよくまとまっている内容だと思いました。

 

 

ナチスやヒトラーという表現を避けたのでしょうけど、「第二次世界大戦前夜のよう」という表現は明らかに1930年代のドイツのことであり、プーチンの行動や発言がヒトラーに酷似していることを指します。また、それを支持する聴衆の姿までが似ています。Zはハーケンクロイツを置き換えた記号です。

1933年、ヒトラー政権を樹立したことを境にして、反ナチス勢力は完全に潰され、歯向かう者は強制収容所に送り込まれました。それと同じく、現在のロシアでは平和的な民主運動、反戦運動は「ほとんど潰された」という内容です。

「反戦への思いが日増しに高まっている」とも言ってますが、これは一部の人たちにおいてのみ。それを表現する手段を奪われつつあって、大多数の人々はプーチン支持の思いが日増しに高まっています。

「反戦運動は少数の者たちによって過激化する」と最後に人権団体の人が指摘してますが、これは必然。行動はさらに高いリスクを伴います。

このところ、「ビバノン」ではロシアからの脱出の動きを取り上げていますが、あれもまたプロテストだと私は認識しています。比較的リスクの少ないプロテストであり、「逃げた」と叩くべきではない。残念ながら、ロシア国内に留まって闘うことはもはや困難なのです。不可能ではない。しかし、相当の代償が伴います。その代償を引き受ける覚悟ができないなら国を出て闘った方がいいじゃないですか。

ボリショイ・バレエ団のトップダンサーじゃないし、人気ラッパーでもない普通の人々であっても、数万という単位で国外に脱出する人が出ていることで「ロシアはこのままではまずい。これでは1930年代のドイツの二の舞いだ」と気づく人はきっといます。気づいたらその人も国を出るしかなくなるかもしれないですが。

※クリミア半島侵攻8周年イベントでプーチンが着ているダウンジャケットは、伊ロロ・ピアーナ製。お値段は£10,000。約160万円です。これはデイリー・メールのスクープです。よく気づきました。対してゼレンスキー大統領はTシャツ。2千円くらいかな。100万円を超える値段のダウンジャケットがあるってだけで驚きで、前を開くとミサイルが飛ばせるようになっているんですかね。ロロ・ピアーナのサイトを見たら、すべてが高い。野球帽が53.900円。こんな野球帽をかぶって野球ができるかよ。野球用じゃないんでしょうけど。

 

 

ロシア・チャンネル1の社員が複数退社

 

vivanon_sentenceその困難な中で果敢に立ち上がったのがマリーナ・オヴシャンニコワでした。

この報道ではあのシーンが5秒も流れたことを強調してます。私はそこを指摘していなかったですけど、アナウンサーがまるで動じていないこととともに、その長さも「スタッフやキャストも知っていたのではないか」と疑うに足る根拠になっています。

ご存知の方も多いでしょうが、テレビの生放送は厳密に言うと生ではありません。秒数は局によって違うと思いますが、たとえば3秒遅れて送信されます。これは放送事故を未然に防ぐためです。チンチンを出したのが乱入してきても、3秒のうちに切り替えればお茶の間にチンチン映像が流れることは防げます。

こういったトラブルを極端に警戒するはずのロシアでもそうでしょう。オヴシャンニコワさんが乱入してすぐさまスイッチすれば1秒たりとも流れない。彼女が乱入した意味を理解するのに3秒かかっても間に合うわけで、5秒もその映像が流れたのはスタッフの意図があったのではないかってことです。

 

 

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