ベラルーシはこれ以上ロシアに肩入れしないと思われる理由—弱いロシアに媚びるメリットがない-(松沢呉一)
「ヨーロッパ各国は、そして日本はどうしてこうもウクライナ難民受け入れに積極的なのか—アフリカやアジアの難民との違い」の続きです。
ウクライナ・メディアは「ベラルーシは派兵してこない」と予想
ベラルーシが今にも参戦しそうな報道がたまに出ていますが、ルカシェンコはこれ以上は踏み込まないと思います。ウクライナのメディアもそういう論調の方が強い。今回の戦争で、「戦争の予想は当たらない」と私は学んでいて、この先どうなるかわからんですけど、今現在はそう思えます。
ルカシェンコはプーチンの言いなりの子分ではなく、微妙、絶妙なスタンスをとることでロシアを利用してきました。ウクライナ侵攻に対して、中国さえ距離を置くようになっていて(中国はロシアの弱みにつけこむ形で再接近するかもしれないけれど)、国際社会で孤立するロシアが最後の頼みとしてルカシェンコをせっついても、ベラルーシ内をロシア軍が移動することを許可し、また、ウクライナ攻撃の場所を提供するところで留まっていて、後方支援以上に今回の戦争に積極的に打って出ることはここまでありませんでした。
ロシアと組んでウクライナを屈服させて、自身のうまみを追求できれば踏み込む可能性もあったでしょうが、その可能性は現在ほとんどなくなっています。
ロシアに国土を使用させることで十分に義理は果たしていますし、参戦して得をすることが何もない。
ベラルーシは、ロシア同様、ハッキングや通信の傍受を防げない。NATOの偵察情報を得て、衛星による通信を使い、ドローンや対空・対戦車ミサイルを駆使してくるウクライナ軍に勝てない。
ベラルーシが参戦する大義もない。つまりはロシアの二の舞い。
なにより醜態を晒し続けるロシアと組みたくはないでしょう。意外にもベラルーシではロシアべったりの報道ばかりではなく、ウクライナ側の主張もある程度は反映されています(確認済みです)。そのためもあってか、ウクライナとの戦争を望んでいる国民はごくわずかだそうです。正しい情報が流ればそうなります。
国民の支持がないという意味では、ルカシェンコこそがその筆頭であって、国民の意に反してゴリ押しすることは得意中の得意ですけど、今回はためらうと思います。ルカシェンコ政権が打倒される契機になるかもしれないからです。
今回のウクライナ戦争では、多くのベラルーシ人が銃を手にしてウクライナ軍に参加しています。ベラルーシが戦争に全面参加したとなると、その銃口は自分に向くことくらい容易に想像できるはずです。
※ 2022年3月27日付「Європейська правда」 「イブロポイスカ・プラウダ」は「ヨーロッパの真実」という意味で、これまた「プラウダ(真実)」ですが、共産党の機関紙の「プラウダ」とは無関係のウクライナのメディア。この記事もベラルーシが本格参戦する可能性は低いとしています。それを含めていくつかの可能性を検討していて、あり得るのはベラルーシ軍の有志がロシア軍に義勇兵として参加することをベラルーシ政府が認めるくらいではないかと見ています。しかし、それだとロシアが望むものには至らないので、結局何もせず、現状の付かず離れずを維持するだろうというのが結論。この写真はワルシャワの路上で撮られたものだそうです。
イスラエルに逃げたベラルーシ人たち
3月20日、ゼレンスキー大統領がイスラエルの国会で演説したじゃないですか。
「なんでイスラエル?」と思ったのですが、イスラエルの防衛システム「アイアン・ドーム」を所望するためだったのかと納得。
また。ゼレンスキー自身がそうであるように、ウクライナにはユダヤ人が多くて、イスラエルは移住のための専用機を何度も出しています。日本の比ではなく、イスラエルはウクライナと関係が深いのです。
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