ロシア軍と戦うベラルーシ人たち—義勇兵とサイバー・パルチザン-(松沢呉一)
「ベラルーシはこれ以上ロシアに肩入れしないと思われる理由—弱いロシアに媚びるメリットがない」の続きです。
ロシア軍と闘うベラルーシの元実業家
ロシア領内の燃料保存施設がウクライナのヘリコプターに攻撃されたとロシアが発表、ウクライナはこれを否定って話はなんなんですかね。
もしウクライナがやったのだとしても、それをロシアが非難する根拠も不明。その何百倍、何千倍ものことをウクライナ領土でやっているくせに。
これはしばらく様子を見ているとして、昨日の続きです。
2022年3月3日付ロシア語版「BBC NEWS」掲載「“Я готов сражаться чем угодно”: почему все больше белорусов едут воевать за Украину」(「私は何者とでも戦う準備ができています」:なぜ多くのベラルーシ人がウクライナのために戦うのか)では2020年にベラルーシを脱出して、ポーランドに移住したヴァディム・プロコピエフにスポットを当てています。
プロコピエフは、ベラルーシでは有名だったレストランを経営する実業家でしたが、ベラルーシの民主化運動が潰されていく中で国も事業も捨てました。ポーランドに出国し、ワルシャワで暮らしていたプロコピエフは今はウクライナで銃を持ってロシア軍と対峙しています。彼は「ウクライナの自由のため、ベラルーシの自由のため」に銃を手にしたと語っています。ロシアと対峙することはルカシェンコと対峙することです。
プロコピエフだけではなくて、少なくとも数百という単位のベラルーシ人が義勇兵としてウクライナ軍に参加しています。
ベラルーシの反ルカシェンコ派の動きをまとめたこのシリーズをざっと書いたところで、タイミングを見計らったように、BBCがこんな動画を公開しました。
パウェル・クラジャンカはベラルーシから米国に亡命。
彼の発言の中で「ああー」と声を出してしまった言葉があります。「ルカシェンコはウクライナに兵を送ると思うか」と聞かれ、「そう願う」と答えたところです。そうすればルカシェンコの軍と対峙することができ、ヤツらをウクライナの地で倒せるのだと。
国を超えて戦う
彼らはルカシェンコがしゃしゃり出ないようにウクライナで戦っているのではない(そういうのもいるとは思いますが)。ルカシェンコを引っ張りだし、ルカシェンコを倒すために戦っているのです。
同じ国でも敵は敵、国が違っても同じ目的に向かっている人たちは手を組める。と言葉にすればわかるのだけれど、実感としては私にはわかりにくい。陸続きの国に住む人たちの戦い方ではなかろうか。
プロコピエフはベラルーシからポーランド、ポーランドからウクライナ、クラジャンカはベラルーシから米国、米国からウクライナという流れですが、ベラルーシからウクライナに脱出していた民主派の人々はもっと高率でウクライナ軍に参加しているはずです。
民主派勢力の中には「銃は持てない」という人たちもいますが、戦争参加の方法は他にも多数あります。それこそドローン部隊であれば銃は手にしない。
また、ベラルーシに残っている民主派の人たちもまたウクライナをバックアップする活動をしています。それもあってベラルーシ政府はウクライナにやすやすと派兵できないでいるはずです。
※バディム・プロコピエフのYouTubeチャンネルより。以前からあるチャンネルで、銃ではなく、魚を抱えてます。
ベラルーシのサイバー・パルチザンがウクライナIT軍に参加
「ウクライナ国防省がロシア連邦保安庁のスパイ620人分のリストを公開—ウクライナIT軍の仕業か?」で見たウクライナIT軍を中心とした連合軍にはアノニマス以外にも注目すべきハッカー集団が参加しており、ベラルーシからサイバー・パルチザンが参戦しています。
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