松沢呉一のビバノン・ライフ

泥酔してウクライナ陣地に迷い込んで捕虜になったロシア兵—ロシア兵の正体[中]-(松沢呉一)

戦死したロシア兵のプロファイリング—ロシア兵の正体[上]」の続きです。

 

 

死ぬのは貧しい若者

 

vivanon_sentenceメディアゾーン」は、5月6日に戦死したロシア兵の調査の続報を出しています。死者数は2,099名に増えています。

おそらく誤解をした人もいたのではないかと思うのですが、将校の割合が多いのは、将校の死は丁重に扱われて、遺体が遺族に届けられ、報道もなされるために漏れが少ないためであると説明しています。私が前回書いた通り。

他のデータに比して将校の数が多いのは、やはり将校の定義が違うためのようですが、詳しく検討するのは面倒なので省略。

以下は今回の続報ではなく、原則「メディアゾーン」4月22日付掲載「ウクライナとの戦争で誰が死ぬのか(Кто гибнет на войне с Украиной)」の数字や記述をもとにしています。

 

将官は別にして、死んでいるのは貧しい地域の貧しい家庭に育った若い世代だとのことで、モスクワやサンクトペテルブルグのような大都市出身者は皆無。ロシアの人口の12パーセントがこのふたつの都市の住民にもかかわらず。

ダゲスタン共和国ブリヤート共和国出身者が多いとあります。ダゲスタン共和国はジョージア、アゼルバイジャンと接し、カスピ海に面しています。ブリヤート共和国はロシアの中央南部にあって、バイカル湖に面しています。もともとはブリヤート人の居住地。

ブチャの犯人として公開された写真でも、少数民族であることを思わせる顔が多数あります。半分以上はそうじゃなかろうか。

また、捕虜の写真や動画でも中央アジア系の顔つきが頻繁に見られます。

ロシアの教育制度は知らないですが、中学を出ると、その先の学校には進学できない。さりとて仕事もなくて軍に入る。

採用地域によって給料が違う可能性がありますが、初任給は月に2万ルーブルに満たない(暴落前のレートで1ルーブルは約1円)。この記事ではないところに18,000ルーブルと出てました。住む場所、食事、制服は支給されるので、それでやっていけますが、これでは贅沢はできない。彼らの中には都市部に住むヤツらに対するやっかみもあって、それが戦地での略奪につながるのでしょう。こんな方法でしか高額なものは入手できないのです。

リテラシーなんてものがあるはずもなく、言われた通りにウクライナはナチスに支配されていると信じていて、片っ端から拷問にかけて殺していく。その駄賃は略奪で得る。

サイテーのヤツらであって、同情する必要はないのですが、自分らをそう仕向け、利用したプーチンや軍部の上層部に対する批判をするんだったら、同意します。

※2022年3月28日付「HB」 若者って感じではないですが、モンゴル系捕虜の例。

 

 

チンギスの告白

 

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上に写真を出したモンゴル系捕虜は、恐怖を紛らわすために酒を飲んで酩酊状態になり、間違ってウクライナ軍のところにやってきてしまって捕獲されたそうな。マヌケです。

彼のインタビューは動画で公開されています。44分もありますが、末端のロシア兵がどういう状態で戦地に連れて来られているのかよくわかりますので、通して観ることをオススメします。理解不能の箇所が多々ありますが、自動翻訳で日本語字幕が出ます。

 

 

 

彼はダムバエフ・チンギス・トゥムノヴィッチ(Дамбаев Чингиз Тумунович)。この中で呼ばれているように、以下、チンギスとします。

チンギスは30歳。捕虜になる兵隊としては歳を食ってます。やはりブリヤート共和国出身だと言ってます。ロシア政府はこういった捕虜たちの映像をフェイクで片付けていますし、身元が追えないように噓を言うのがいるので、ブリヤート共和国出身であることを証明させるための質問をいくつかしていて、彼はブリヤート語を話しています。

 

 

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