「ロシア国民は政府に騙されている」は半分正しくて半分間違っている—全体主義体制における賢い生き方[1]-(松沢呉一)
「ユーロヴィジョン2022はウクライナ代表カルッシュ・オーケストラが優勝—これでよかったのかな」の続きです。
カルッシュ・オーケストラ「ステファニア」の新しいMV
カルッシュ・オーケストラが、ついさきほど、ユーロヴィジョン2022で歌った「ステファニア(Stefania)」の新しいMVを発表しました。
こんなんを用意していたのか。
歌詞は戦争がテーマではなく、母親に呼びかける内容なのですが、このMVではウクライナで闘う母たちの歌にしました。この曲を勝利の讃歌にしたいと解説部分に書いています。
こうなると、優勝しておいてよかったですけど、どうせだったらロシア代表も参加していた方がよかったと思います。そうなればロシア人もユーロヴィジョンを観ます。カルッシュ・オーケストラが優勝するのを観て、このMVを観る人もいたはずです。
ウクライナで何が起きているのか知らないロシア人たちが現実を知って愕然とし、明日から路上に出て反政府運動をやります。なんてことは起きないですけどね。なぜ起きないのか。全体主義体制においては、その構成員は情報を知らされないだけではなくて、情報を知ることができても知ろうとしないし、知っても受け入れなくなるからです。
そのことは今までも書いてきましたが、ロシアでくっきりと見えてきているので、改めてまとめておくことにしました。
戦勝記念日に政府系メディアが掲載した「プーチンは哀れな独裁者であり、パラノイドである」の見出し
5月9日の対独戦勝記念日を境にして、ウクライナ戦争を巡る状況が大きく変化してきたように思います。
あの日のプーチンの演説は強さをなお装いながらも、すべてをNATOのせいにする幼稚な弱さをも露呈していて、その弱さの部分が音を立てて拡大してきています。
ウクライナ北東部での笑ってしまうくらいのロシア軍の大敗北に続いて、同地域でのロシア軍の撤退。軍のトップであるゲラシモフがパレードに姿を見せず、この前後に多数の軍幹部が粛清された、もしくは自ら辞任したと思われます。
また、あのパレードの日、政府系メディアである「レンタ.RU」で、ジャーナリスト2名による40本に及ぶプーチン批判、ウクライナ侵略批判の記事が公開されたことも象徴的でした。
これらの記事はすぐに消されて、「レンタ」自身はノーコメントでしたが、いつものように「ハッキングされた」という情報が出てきます。
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