少なからぬロシア系ドイツ人はプーチンのプロバガンダを信じている—全体主義体制における賢い生き方[5]-(松沢呉一)
「自分で考えて答えを出そうとするより思考停止する方が得—全体主義体制における賢い生き方[4]」の続きです。
5月8日のドイツでもプーチン支持のロシア人たちがデモをしていた
間にいろいろ入ってしまって、このシリーズが後回しになってしまいました。もうちょっとなので、とっとと終わらせます。
ここまで見てきたように、ロシア人の8割がプーチンを支持しているのは、「テレビしか情報がないから」では説明がつきません。「情報があるのに知ろうとしない」「知っても受け付けない」のです。その状態を強いられてきたとは言えるとしても、情報を知ることができない状態を強いられているわけではない。ここは微妙に違うので、正確に見ておいた方がいいと思います。
以前から指摘しているように、情報があっても受けつけないないことは、ドイツやオーストラリアのプーチン支持派を見ればわかりましょう。
以下のドキュメンタリーは本年5月8日のドイツの様子から始まります。ドイツでは「解放の日」です。ナチスから解放された日ですが、これだとまるでドイツの国民はナチスに内心反対していたみたいで、現実とずれます。現実には、ほとんどのドイツ国民はナチスを支持していました。現在のロシアと同じです。ファシズムはしばしば国民の支持で登場します。
「プーチンとは無関係に、かつてナチスと闘って勝利した歴史を祝うだけ」という人たちも実際にいるのでしょうが、プーチンはナチスと闘ったことと、ウクライナを侵略することを重ねることで、自身を正当化していることは明らかですから、この日を無批判に祝うことはプーチンに加担することです。実質、プーチン支持であることをそう言ってごまかしている人たちもいそうです。
プーチンと関係がないとしながら、ファシズムとバンデーラに反対だと言ってます。ドイツでも、ステパーン・バンデーラはナチスの協力者と一般に見られているようなのですが(「ステパーン・バンデーラからアゾフ連隊へ」シリーズで見たように、私はそれについてクリアな判断はなおできないでいます)、わざわざここでバンデーラの名前を出しているのは、ウクライナはナチス国家であり、ロシアが侵攻したのは当然だと言っているに等しい。
ドイツのロシア語話者コミュニティはクレムリン直結
ドイツにもプーチン支持の人たちがああもいることは、情報がないのではないことを雄弁に物語ります。ドイツにいればイヤでも情報が入ってくるはずなのに、プーチンを支持し、侵略を支持しています。
ドイツにいるプーチン支持派は、「ロシア系ドイツ人と極左からなる」と説明しているものもあります。日本での極左はおおむね新左翼を指すのだと思いますが、新左翼の多くは反帝・反スタであり、ソ連の時代のソ連を支持する左翼はオールドスクールの左翼でしょう。ソ連崩壊後に、ロシアを支持する左翼がどういうもんかわからんですけど、一部はいるとして、大多数はロシア系です。
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