松沢呉一のビバノン・ライフ

今回の食糧危機がいかに深刻かを改めて考える—国連UNHCR協会のスタッフと立ち話-(松沢呉一)

ロシアが前倒しにした人類滅亡のスケジュール—ウクライナ戦争と食糧危機と気候変動[下]」の続きです。

今回出てくる会話は録音していたわけではなく、メモしていたわけでもないので、正確な再現ではないことをお断りします。

 

 

国連UNHCR協会の街頭キャンペーンに出くわした

 

vivanon_sentence国連UNHCR協会が、街頭で難民支援に対するサポーター集めをしていました。国連UNHCR協会は国連UNHCRそのものではなくて、寄付集めを分担する国内団体です。

ウクライナを前面に出していたのですが、日本では避難してきたウクライナの人たちは法律上の難民ではないので、UNHCRの対象ではないでしょう。

ウクライナ戦争によって世界は食糧危機に陥る寸前ですが、ウクライナ難民自身が飢餓の危機に瀕しているわけではなく、ウクライナがどうあれ飢餓の危機にあるのは、アフガニスタン、イエメン、シリア、エチオピアなどの戦争や内戦によって、テント暮らしを強いられている人々です。彼らは自立も難しい。

ウクライナ関連でもUNHCRが活動しているのは動画で見てましたけど、UNHCR協会がウクライナを掲げて募金を集めているのはちょっと意外に思いました。「あんたたちの仕事はアフガニスタン難民やロヒンギャ難民じゃないんか」と。

UNHCRがやっているのは食糧の援助だけでなく、医薬品や医療の提供だったりするんですよ」とのこと。

ああ、そうか。ウクライナの人たちも、その意味で現在緊急で対応する必要があります。怪我人、病人が多いですし、感染症の拡大も懸念されています。私は食い物のことばっかり考えてました。

「それでも、これまではウクライナの関心が高かったので、我々としてはあまり力を入れていなかったんですよ。最近になって、そろそろやっておいた方がいいかと思いまして」

「関心が急激に落ちてますもんね」

「そうなんです。とくに今月に入ってから落ちてます。地域差もあると思うんですけど、東京や埼玉では“もう終わったこと”と思われています」

ここに来てプーチンはウクライナについて触れなくなっていて、さすがに自分の失敗を認めるしかなくなってきて、さりとてそれを表明することはプライドが許さず、「なかったことにする」作戦に出ているのではないか。関心が薄れることはそんなプーチンの思惑に加担することになります。

日本UNHCRのサイトでもトップにウクライナが出ています。100日目に出されたものでしょう。

 

 

ウクライナの関心が急速に落ちてきている理由

 

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新たな展開がないので(ないわけではないですが、関心を維持するほどの展開はない)、飽きるのもわかりますが、「終わったこと」はひどかろうと。

「なんでなんですかね。まだまだ続いているのに」

「いろいろ理由はあるんでしょうけど、報道が大きいんじゃないですか。今も戦況については報じられていますけど、そこにいる人たちをクローズアップするような報道が減っているんだと思います」

私にそういう実感がないのは、YouTubeでチェックしているからかもしれない。全国のローカルニュースで取り上げられる「ご当地ウクライナ人」をひと通り見ていると、丁寧にフォローしているように思ってしまいますが、福岡や愛知のように、継続して取材し続けている地域は別にして、テレビを観ていると、ほとんど目にしなくなっている地域が多そうです。

とくに首都圏は他に取り上げる情報が多いこともあってか、ウクライナ人の数が多いわりに取り上げられていない印象が私にもあります。

 

 

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