松沢呉一のビバノン・ライフ

1972年のミュンヘン・オリンピックで月面宙返りが初登場してから半世紀—SWASHの存在はいかに重要か-(松沢呉一)

「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」とそれに対抗する「セックスワーカー差別集会への抗議行動」の試合は後者の圧勝—法をめぐる議論で法を曲解する人たちは退場すべし」の続きとして書いて、放置していたものです。

以下に書いている事情から、しばらくの間、できるだけ要友紀子のことを書こうと思っていて、これも「20数年を振り返って感無量になった—参院選で要友紀子を当選させる総決起集会」の続きとして加筆しました。最後にちょっと出てくるだけなので、通常の更新です。

 

 

フィギュアスケートの4回転は当たり前の技になる

 

vivanon_sentence銭湯の脱衣場で流れていたテレビ番組で、4回転ジャンプを得意とする17歳のフィギュアスケート選手を取り上げてました。画面を見ず、耳に入ってくる音声を漫然と受け取っているだけだったので、あやふやな理解ですが、米国の選手だったと思います。

これに対して、「これからは4回転が当たり前になる」と誰かがコメントしてました。こん時も画面は見てないので、誰がそう言っていたのか知らない。

「へえ」ってだけで、その時はどうとも思っていなかったのですが、銭湯の帰り道に、このことが思い出されました。

ああいうのって不思議よね。今はまだ4回転をコンスタントに成功させることができれば、こうやって国外のテレビでも騒がれますけど、そのうちそれだけでは注目されなくなります。

1972年、ミュンヘン・オリンピックで、塚原光男の月面宙返りが初披露された時は衝撃でした。

 

 

この時のことはよく覚えています。先駆者である塚原は、血が滲むような苦労をして、やっと完成させた技です。この瞬間、こんなことができるのは世界にただ一人でした。人間を超えた怪物です。

しかし、完成したあと真似るのは3分の1,5分の1、10分の1のエネルギーで可能になります。こうしてやがては国体でもインカレでもやる技になっていき、今ではインターハイでもその先の技が当たり前になってます。中学生で月面宙返りをやるのも珍しくはないはず。怪物がいたるところにいて、そうなるともう怪物ではない。

先駆者はいかに偉大かってことです。当たり前になればなるほど、その技をマスターすべく訓練するのも早いので、技を習得するのも早くて、今度はその先を目指せます。ここからまた血が滲みます。

こうして世界は進歩してきました。

 

 

「考え」も同じ

 

vivanon_sentenceこのような進歩のパターンはスポーツだけでなく、あらゆることに言えます。音楽もそう。ギターの新しい演奏法も最初は驚きますが、やがては定番になります。デスボイスもそうです。ビートボックスもそうです。

 

 

天才と言われるSHOW-GOだからできること。しかし、こういう技もそのうち小学生がやれるようになります(あくまで技を真似ることができるのが出てくるだけで、こんな曲までは創れないでしょうけど)。

 

 

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