「地球温暖化によってロシアは得をする」と信じているロシア人たち—ウクライナ戦争と食糧危機と気候変動[上]-(松沢呉一)
ウクライナ侵攻はただの領土拡大だったことを明らかにしたプーチン
プーチンのこの発言には驚きました。
ピョートル大帝の評価としつつ、ウクライナへの侵略は、もともとロシアだったものを取り戻しただけであり、当然のことだと言っているに等しい。つまり、ウクライナはネオナチだのなんだのという言い分はなんの意味もなかったことを明らかにしています。
ヒトラーはユダヤ人だったとの与太をラブロフ外務大臣が口にするくらいで、ナチスに関心もなく、最初からチンピラのインネンと同じようもんだろうと見透かせていたわけですけど、そのことをここまではっきりさせたことに驚いたわけです。
国民が事実に気づいてしまったらまずいだろと心配になります。と考えてしまうのは、「プーチンや閣僚は狂っているけれど、国民はまともで、ただ騙されているだけなのだ」という定型の発想がなお私自身にあるからです。私はさんざんそのような考え方を否定してきたにもかかわらず。
ロシアの為政者は「普通のロシア国民」が考えていることを実現している
現実にはロシア国民の多くは「ウクライナはネオナチ国家である」なんて言い分にはたいした意味がないことをわかっているでしょう。わかっていなかったのがやっとわかってきたところで動揺はありません。なぜならロシア国民の大半は、ウクライナはもともと自分らの領土であり、それを取り戻す権利があり、そもためにはウクライナ人ごときを虫けらのように虐殺してもいいのだと考えているのです。
というのは言い過ぎとしても、それに近い分析が「メデューザ」に出て入るのを一昨日バイトに向かう電車の中で読みました。
筆者は世論調査を手がけている独立系の団体であるレバダセンターの社会文化研究部長のアレクセイ・レヴィンソンです。
アレクセイ・レヴィンソンは、レバダセンターの調査に基いて、ロシアの為政者は「普通のロシア国民」が考えていることを実現しているのだと書いていました。これは重要な指摘です。
「メデューザ」でもこのところ、プーチンの後継者問題を取り上げていますが、誰が後継者になろうと、その方針を決定づけるのは国民であり、ロシア国民の多くはウクライナを自国に組み入れるまでは戦争を続ける覚悟だろうと思われます。
それに反対している国民はもちろんいますが、せいぜいのところ、4人に1人。残りの3人はプーチンと同じようなことを考えています。多数派にしてみれば、「戦争反対」「プーチン反対」なんて主張するのは裏切り者であり、「不潔な売春婦」でしかありません。ゾーッとします。
※レバダセンターのサイトよりアレクセイ・レヴィンソン
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