松沢呉一のビバノン・ライフ

事実より思い込みを重視する記事作りはやめれ—要友紀子に関する「デイリー新潮」の記事を批判する[上]-(松沢呉一)-[無料記事]

 

「出来が悪すぎる悪意の記事」を検証する

 

vivanon_sentenceモダンフリークスの福田君が教えてくれたのですが、この「デイリー新潮」の記事はサイテー。

 

 

2022年6月21日付け「デイリー新潮」掲載「立民が参院選に「セックスワーカー団体代表」擁立で波紋 「売春肯定本」の著書もある女性候補の“過激な主張”

 

 

「出来のいい悪意の記事」もあり得るでしょうが、これは「出来が悪すぎる悪意の記事」です。

要友紀子本人は、こんな記事を丁寧に批判している暇はないでしょうから、どんだけ出来が悪いかを私がチェックしていくとします。

 

 

調べもしないで断定する「立民関係者」を鵜呑みにした間抜けなライター

 

vivanon_sentenceこの一文は署名がなく、編集部原稿ですが、書いた人物を「ライター」とします。

ライターによると「立民関係者」とやらがこんなことを言ったそうです。

 

「昨年、風俗業者に持続化給付金が支給されない問題が持ち上がった時、要氏が党に陳情に訪れたことがきっかけでコネクションができた。本人が公募に応募し、正規のルートで選ばれたようです。党内では『ちゃんと彼女の言動を調べて選んだのか』と不満が噴出しています」

 

見てきたようなことを言ってますが、見事間違ってます。いかにも「ポッと出」という印象を抱いて、調べもしないで断定したのでしょうが、「要友紀子が立候補した事情—長谷川博史と山本夜羽音(洋一郎)と要友紀子[下]」「宮台真司と中川えりなと要友紀子について話した—要友紀子の黒幕って誰だよ」に書いたように、政界とのコネクション作りは学生時代から始まってます。今から20年以上前。コネ作りなんてことを考えてのことではなくて、どこにでも誰にでも会いに出かけていく要友紀子の特性の結果です。

内密の話だったらまずいので、名前は出さないでおきますが、20年以上前の段階で、誰もが知る超大物議員とのつながりがあって、その議員所有のマンションで『売る売らないはワタシが決める』の打ち上げをしています。要友紀子のセッティング。

今回の立候補についても、立憲民主党の公認が決定する前に、内部の複数の人に相談をしています。これらも以前からの知人たちです。外に見える形で、複数の立憲民主党の議員が協力していることからも、要友紀子の人脈の広さは見てとれるわけで、昨日今日コネができたわけではありません。「立民関係者」が思い込みで語っていることは明らかでしょう。

取材する気さえないライターがまたも悪意を発揮するといけないので、念の為に書いておきますが、「正規のルートで選ばれた」のは事実であり、コネで選択されたのではありません。事前に相談をしていただけです。

「ちゃんと彼女の言動を調べて発言したのか」と「立民関係者」に対する不満が噴出し、「ちゃんと彼女の言動を調べて原稿を書いたのか」とライターに対する不満が噴出する原稿です。新潮社内部にも彼女のことをよく知っているのがいるので、聞けばよろしかったのにね。

 

 

ただのデタラメの羅列

 

vivanon_sentence続く「立民関係者」の発言。

 

「『なぜ業界を規制する法案を作ったばかりなのに、業界寄りの人間を招き入れるのだ』と怒っています。一見、彼女の主張は、セックスワーカーの権利に寄った聞こえのいいものではあるのですが、過去の言動をよく調べると、業界全体を庇護しているとも受け取れかねない主張を展開しているのです」

 

出ました、「業界寄り」。

この「立民関係者」はAV新法は業界を規制するための法律だと認識しているようです。しかし、多くの議員は規制のための規制ではなく、目的のための規制だと考えています。だから、今後も議論を続けて見直しをすると言っているわけで、その際に業界の意見を吸い上げることは当然あるでしょう。

立憲民主党としてはそう考えているはずです。業界の意見をまるで聞かず、現場をまるで知らない政治家が空疎な法を作り上げてもいいのだと考えているような人間は、党を出ていけばいいんじゃないですかね。

こんなことを言った質の悪い関係者が現にいたとして、それをそのまま紹介している以上、ライターもこの発言に同意をしているのでしょう。

「業界寄り」とする根拠のひとつは要友紀子のツイートです。

 

〈重要なのは、ゴムフェラを義務づけるのではなく、生フェラでもゴムフェラでも、働く人が選べるようにすることです。/性感染症検査の考え方と同じ。/生でやりまくってる一般市民の人々のセックスに対して義務付けない事を、セックスワーカーにだけ義務付けるのは差別的なので、重要なのは選択出来る事〉(20年8月12日)

 

このツイートに対してライターはこう書いています、

 

卑猥な表現が気になるが、この主張はセックスワーカーの権利拡大を訴えている一方で、過激なサービスを提供する業者側を利する内容にも聞こえなくもない。

 

普通の読解力があれば聞こえねえよ。

「卑猥」ってどこのこと? 「生でやりまくっている」が卑猥? どんだけカマトト。本気でこれが卑猥だと思っているのであれば、「デイリー新潮」に向いてないようですよ。もっと清潔でお上品なメディアで仕事をすることをオススメします。

要友紀子のツイートはどこをとっても働く側の権利拡大、働きやすさを求めたものでしかないでしょうに。「性感染症検査の考え方と同じ」としているように、一部店舗でやっているような強制的検査ではなく、本人が検査するかしないかを決定するようにするのが望ましいのと同じです。

では、このライターは、働く側に選択肢を認めず、店が強いる通り、客が望む通りのサービスをすべきであり、検査も強制がいいと考えているのか?

このふたつの考え方を比べて、要友紀子の書いていることが「業界寄り」? まったく意味がわからない。

この原稿は幻覚と幻聴を根拠に「もしかすると、そうなのかもしれない」と書いているだけですから、第三者に通用する論理が存在していません。つまりはただのデタラメの羅列なのです。

一所懸命過去のツイートを粗探ししたのでしょうが、やっと見つけたのがこれだったようです。ご苦労なこってす。

※「こんな記事も読まれています」と示される「デイリー新潮」の記事

ただのデタラメ以上に悪質な原稿であることを次回指摘します

 

 

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