「野党は表現を潰す存在」「与党は表現を守る存在」という認識が広まってしまったことの困惑—今からどう是正できるのか-(松沢呉一)
「表現の自由の素晴らしさを下ネタに見た—第12回「下-1グランプリ」の優勝はぐにすち村夫」と「「「ジューシィー!」に行って号泣しました—私の探しものは見つからず」の続きです。
大事な時間
先週日曜日の「ジューシィー!」では、ゆったりとした時間配分でステージが進行し、ステージとステージの間の時間がたっぷりとあったので、コロナ禍を挟んで数年ぶりに会う人たちと話もできて、大変いい日でした。
この2年半で、髪型が変わっていたり、肉付きがよくなっていたりしましたし、なによりマスクをしていたためにすぐに誰かわからないことが何度もありましたが、久々に顔を見られただけでも嬉しい。
その前の「下-1グランプリ」もそうだったけれど、こうやって自身の表現を見せる場、集まった生身の人が互いに顔を見て話をする場は大事だなあと改めて思いました。
閉鎖された室内のイベントですから、今だってなお新型コロナの感染リスクがあるのだけれど、無条件に中止ではなくて、感染を避ける工夫をしつつ、あるいは感染することを覚悟しつつ、コロナ禍でも継続すべきだったとつくづく思います。
ピンクベア長谷川さんはHIVだし、糖尿病だしで、基礎疾患がありすぎでしたから、こういう場所は避けた方がよかったことは言うまでもなく。つうか、自身がそのことをよくわかっていて、コロナ禍では外に出ないようにしていたようです。
久々に会った人たちともっとも話したのは要友紀子のこと
久々に会って話す内容は、この日の主役である長谷川さんのことももちろんあったのだけれども、多くの人たちにとっては亡くなってから時間が経っているので、話したいことはもう誰かに話していますし、コロナ禍があったため、長谷川さんに最後に会ってから時間が経っています。
コロナ禍での長谷川さんはほとんど家から出ず、よって人にも会わない生活だったため、私自身がそうであるように、最後に会ったのがいつかもはっきりとは覚えていない人が多く、長谷川さんのことは早々に終わらせて、記憶が鮮明な要友紀子のことの方が話題になっていました。私の周りの人々だからでしょうけど。
私の知人たちも要友紀子とは面識があるのが多いですし、面識がなくても、存在は知っているため、今回の立候補に注目していました。「ビバノン」の関連記事を読んでいた人たちも多かったようです。
彼女は多くの人に力を与えました。SWASHがやってきたエンパワーメントを今回は要友紀子個人で実践。つぶさにTwitterを見ていた人たちによると、要友紀子の一挙手一投足が人々に伝わっていったことをリアルに感じ取ることができたとのことです。
その時に、彼女が元セックスワーカーであることを明言したことが大きかったと指摘する声もありました。長谷川さんも、自身が同性愛者であること、HIV感染者であることを公言したことが多くの人の支持を得たのと同じです。そのことを嫌う人たちもいたでしょうけど、その何倍も支持する人たちがいました。今回も同じです。
「野党は表現を潰す存在」という認識の怖さ
この場でも話したのですが、「要友紀子の立候補がもたらした勇気や希望や夢や未来—選挙戦で彼女が得たもの」に書いた「野党は表現を潰す存在」「与党は表現を守る存在」という認識が広まってしまっている現実が頭のなかをぐるぐる回っています。
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