松沢呉一のビバノン・ライフ

外貨の稼ぎ頭であるIC3PEAK(アイスピク)もすでにロシアから脱出—そして、誰もいなくなればいい-(松沢呉一)

 

闘うIC3PEAK

 

vivanon_sentence今まで私はあんまりロシアのロシアのポピュラー音楽に興味を抱いたことがありませんでした。ソ連時代から聴くきっかけはたびたびあったのですが、ダサいと言うか泥臭いと言うか、面白く感じられなかったのです。

今回、興行業界で流布されるブラックリストのミュージシャンをすべてチェックしたら、面白いミュージシャンがいっぱいいました。私の老化が進んでロシアのレベルに合致したのかもしれない。それらをまとめておきたいとも思ったのですが、「ビバノン」で音楽ものをやってもあんまり受けない。私の趣味は偏りすぎか。

つうことで、そのまま放置してましたが、ちょっとしたきっかけがあったので、あと一組だけ紹介しておきます。

なぜ女のアスリートの方が同性愛者であることを公言し、戦争批判をし、国外脱出するのか—ミュージシャンと共通する点としない点」に、次に国外に脱出しそうなミュージシャンはドラだと書きました。

他にも国外に出そうなミュージシャンがいます。たとえばIC3PEAKです。読みは「アイスピク」のようです。3は数字の3ではなく、Eってことなのかな。

IC3PEAKは2013年にデビュー。保守派を逆撫でし続けていますが。初期は英語曲が多かったためもあってか、さほど問題にはならず。

しかし、2018年の「Смерти Больше Нет(もう死はない)」という曲が大問題に。

 

 

1億再生回数を超えてます。

この曲は自殺を誘発するとして社会不安まで引き起こし、当局もクレムリンを批判していると過剰反応して、コンサートに中止命令を出して、従わなかった主催が連行されるなどの騒ぎを起こしており、今回のリストに入る前から目をつけられています。

この時も国外で彼らをサポートする動きがあったように、国外人気が高く、たびたびツアーでヨーロッパや北米、南米を回ってます。さもないとなかなか1億再生回数を超えない。これならロシアを捨ててもやっていけましょう。

 

 

ウクライナ支援を呼びかける

 

vivanon_sentenceここ数年は当局に目をつけられ、コンサートが中止に追い込まれたり、メンバーが拘束されたりを繰り返していましたが、抵抗をやめず。

ロシアがウクライナに侵攻したあとの3月19日に出した曲。

 

 

この曲はプッシー・ライオットっぽい。たぶん意識しているんだと思います。

てっきり私はプッシー・ライオットはロシアで孤立しているのだと思っていたのですが、国外に出たミュージシャンたちのインタビューを読んでいると、影響を受けているだけでなく、活動をともにしていたバンドも多かったようです。とくにパンク系。

男と男がキスし、女と女がキスしていますから、その点でも当局は許しがたいでしょう。

IC3PEAKはこんな曲を出し、自分らのサイトで戦争反対を表示したために、サイトは閉鎖され、ブラックリストのためにコンサートもできない。その前からほとんどできなかったのですが。

2週間前に公開された、それらに対する怒りの曲。

 

 

 

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