松沢呉一のビバノン・ライフ

独裁者に立ち向かった人たちが報われる世界でありますように—ロシアから脱出した人々の調査[下]-(松沢呉一)

プッシー・ライオットのニカ・ニクルシナはプーチンの死を願う—ロシアから脱出した人々の調査[中]」の続きです。

 

 

脱国ロシア人の行き先

 

vivanon_sentenceロシアの世論調査はすべて信用できず、有害なものでしかないと主張するロシアの研究者もロシアを見捨てた」で取り上げた研究者、マルガリータ・ザヴァツカヤの存在を最初に知ったのはメデューザのインタビューでした。これは世論調査とは関係がなく、今回の戦争で、ロシア国外に脱出した人々を対象にした調査についてでした。

マルガリータ・ザヴァツカヤはOK Russians projectに参加していて、それについてのインタビューがメデューザに出ていたのです。

脱国したロシア人を対象にしたOK Russians projectの調査は継続中であり、報告書の類はまだできていないようですが、どういう人たちが調査対象であり、どこの国に移住したのかといった基本的なデータについてはマルガリータ・ザヴァツカヤが語っています。

以下は移住先。

 

 

 

距離的に近く、ロシアからだとビザのいらないジュージアが一番多いのかと思っていたのですが、トルコの方が多い。ジョージアもヨーロッパの中では生活費は安いのですが、トルコの方がさらに生活費が安そうなのと、ジョージアは6月まで新型コロナのための入国規制が厳しかったためかもしれない。。

上位はビザなしで入国できる国々ですが、トルコはビザなしでいられるのは2ヶ月のみ。大半はトルコから別のところに移動しているはずです。

ロシア系住民が多いドイツに移住した人々も相当数いると思っていましたが、ドイツは下の方に見えているだけ。取材がやりやすいので、ドイツメディアが取り上げる機会が多いだけで、全体からすると一部。

それぞれの国でロシア人を敬遠するところがあるのだと思います。中国同様、こういう場合にスパイを入れ込んでくるのは定石ですし、ドイツがそうであるように、二代目、三代目になると、ロシアナショナリズムに目覚めてしまうのが出てくるのを見ると、「今はよくてもなあ」とも思ってしまいましょう。

 

 

ロシア脱国組は半数近くがIT関係者

 

vivanon_sentenceサンプルに偏りがあって、全体を表すものではないとの注釈つきで、45パーセント以上がIT関係。ジャーナリズム関係は8パーセントとマルガリータ・ザヴァツカヤは言ってます。こういう仕事の人たちはアプローチがしやすいために調査をする際には数字が大きくなっていそうですが、IT関係であればオンラインで仕事ができる(こともある)ため、国を脱出しやすく、事実人数は多いのではなかろうか。

The City where Thousands of Russians have fled since the Invasion」で大事な役割を果たしていたクリスチーナもまた仕事はIT関係だと言ってました。安宿に泊まっていて、生活は楽ではない。それでもウクライナ人を支援しています。

彼女もそうですが、年齢は若くて中央値は32歳。4分の1以上がロシアにおいては富裕層に属し、この富裕層はロシア全体の4パーセントしかいない層。残りも経済的に余裕のある中流です。金を持っている層が逃げているのです。ミュージシャンでも国外に逃げたのは売れている人たちであるのと同じ。経済的余力がないと、すぐに干上がります。

 

 

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