松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシアからの脱出をサポートする人々—ロシアから脱出した人々の調査[補足]-(松沢呉一)

 

ロシアでは食えなくなった技術者や科学者は国外を目指す

 

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独裁者に立ち向かった人たちが報われる世界でありますように—ロシアから脱出した人々の調査[下]」を出してから読んだ記事に出ていたのですが、数万人に及ぶIT技術者がロシアから脱出しているのは、「国を出ても仕事が見つかりやすい」という事情とともに、「ロシアにいても仕事が得られにくくなった」ということもあります。

もともと国外からの発注で仕事をしていたのに、経済制裁によって国外からの発注が途絶えてしまって、仕事が激減。会社単位で仕事がなくなったため、経営者と従業員が揃って国外脱出するケースもあるそうです。

これは今現在進行していることで、国外脱出の第二波と言われています。第一波は3月4月に、戦争反対の行動を起こしたり、メディアに関わっていたために逮捕されるリスクのあった人たちが中心で、そちらが落ち着いたところで、経済制裁による第二波が発生して、現在も続いています。

ジョージア、モルドバあたりはすでに飽和していて、物価が上昇し、住むところもない。国内のロシア人に対する反発も高まりかねない。運良くIT技術者は世界のどこでも仕事ができる可能性があるため(そう簡単ではないと思いますが)、ロシアから近い国に行く必要はなくて、北米やオーストラリアはもちろん、南米や東南アジアなどに移り住んだ人たちもいます。この際、好きな国に行くという選択もあります。永住権をとるには時間がかかりますが、日本に来ているロシア人もおそらくいるでしょう。

すでに説明したように、ロシア人に対しての入国審査が厳しくなっている国が多いため、密入国も増えているようです。IT技術者はあんまり関係ないと思いますが。

※2022年4月2日付「The Guardian」 4ヶ月前の記事ですが、科学者の世界でも似たようなことが起きていて、西側からの資金で研究してきた科学者たちは、資金がストップしてしまってロシアに居続ける希望をなくし、国外脱出が始まっているという内容。彼らとて飢え死にしたくはないので、受け入れ先を決めてから脱出する人が多いでしょうから、夏の間に脱出する人が激増しているはず。

 

 

悪化するロシアとイスラエルの関係

 

vivanon_sentenceプーチンが「裏切り者は出て行け」みたいなことを言うものだから、「はい、わかりました」と続々ロシア人が国を捨てています。ウクライナ侵攻以降、ロシアから脱出したロシア人は100万人以上という見積りは膨らましすぎかもしれないですが、40万人から50万人が脱出したことは間違いなさそうです。

その多くが20代から30代の若い世代です。もう少し上の世代も含まれましょうが、能力の高い科学者やそれ以外の研究者も多数脱出。ポピュラー音楽、クラシック音楽などの音楽家やスポーツ選手たちも続々脱出。

 

 

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