マンタイ・テオの架空恋人騒動と国際ロマンス詐欺—会ったこともない相手を恋人だと思い込むマヌケたち-(松沢呉一)
マンタイ・テオの恋人は存在しなかった
これもバイトに向かう電車の中で読んだメデューザの記事から。
ロシアにもウクライナにも関係のないドキュメンタリー映画の内容紹介です。
この映画。
今から10年前、ノートルダム大学のアメリカンフットボール選手であったマンタイ・テオは、悲劇のスターとして脚光を浴びました。
彼はハワイ出身。恋人のルネー・ケクアも同じくハワイ出身。彼女はスタンフォード大学の学生でしたが、交通事故に遭い、その後、白血病であることが発覚、
2012年9月11日、テオは祖母を亡くし、同じ日に恋人のケクアも亡くしました。
その悲しみに屈せずに試合に出て活躍し、チームを勝利に導いたテオの姿は大きな感動を呼びます。
ところが、スポーツ関連のブロガーの調査によると、祖母の死は確認されながら、恋人のケクアは死んだ事実のみならず、存在さえ確認ができず、マンタイ・テオの知人である、やはりハワイ出身のロナイア・トゥイアソソポが捏造した架空のキャラであったことが暴かれます。
公表されていたケクアの写真はトゥイアソソポの同級生のものであり、彼女はピンピンしていました。
テオはトゥイアソソポが扮するケクアとインターネットのやりとりだけで恋人気分になっていたのです。
この騒動は米国では大きな話題になりましたが、アメフト自体、日本はそれほど盛んではない上に、学生選手の話です。いくらかは報じられていますが、私は全然知りませんでした。
改めて検索してみると、架空の存在であることが発覚して以降も、テオはただの被害者という扱いではありません。テオは彼女と電話で頻繁に話し、会ったとの噓を言ってました。そのため、彼自身が、捏造に加担していたのではないかとの疑いを抱かれています。
また、ただの被害者だとしても、男が演じる会ったこともない架空の存在を恋人だと思い込むマヌケという扱いです。
この扱いは適切だと私は思います。二次元の存在に恋をすることもあるでしょうが、それを現実の存在と想いこむのはマヌケ。その境界が失われるのはマヌケなのです。
※「UNTOLD 架空の恋人」は本日からNETFLIXで配信開始
国際ロマンス詐欺の被害者も少しマヌケ
前から言っているように、国際ロマンス詐欺の被害者たちにはあまり同情できないところがあります。だってマヌケじゃないですか。と言ってしまうと、被害者が名乗り出ることが難しくなってしまうので、「少しマヌケ」程度にしておきますが。
昨今話題の統一教会のような教団に金を巻き上げられた人たちには同情があります。巧妙に仕組まれていますし、なにより目の前の生身の人が「金を出さないと霊障が解けない」と脅してきます。人間、目の前にいる人を信用してしまうってもんです。
しかし、国際ロマンス詐欺は会ったこともない相手に金を出す。似たような事例がないか検索する、友だちに相談するなど、冷静な判断力が働く余地がいくらでもあるはずだと思えて、同情する気になれないのです。この条件で出していいのは「戻ってこなくていい」と思える金額まで。人によっては5千円。人によっては5万円、人によっては50万円。それ以上出すのは、端的に言えば、「バカじゃなかろか」と。「少しバカじゃなかろか」か。
マンタイ・テオの場合は金までは騙し取られていないので(たぶん)、まだましです。
よって、あまり興味も抱けず、このところは国際ロマンス詐欺の報道もチェックしていなかったのですが、ガーナで容疑者が逮捕されたレアケースなので、以下の件はチェックしました。
(残り 1221文字/全文: 2823文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ