「ダリア・ドゥーギナを爆殺したのは国民共和国軍(NRA)」という説もやっぱり釈然としない-(松沢呉一)
「釈然としないダリア・ドゥーギナの爆殺—ロシア連邦保安庁(FSB)が犯人を特定しても全然説得力がない」の続きです。
エカテリンブルクの元市長が拘束された
もうしばらく日本に来ているウクライナ人を見ていくつもりだったのですが、以下を見て、「抵抗するロシア人」を一回挟むことにしました。
軍事侵攻を批判する人間は、エカテリンブルク(人口150万人で、ロシアで4番目に大きな歳)元市長でも逮捕して刑務所にぶちこむ。
この国では民主主義手続きがもはや存在しません。こうなったら非民主主義的な方法をとるしかないと以前から言っている通り。
ダリア・ドゥーギナ爆殺事件はその始まりかとも思うのですが、なんかシャキッとせんのよね。
ダリア・ドゥーギナを殺害したのは国民共和国軍?
ダリア・ドゥーギナの爆殺については、西側メディアの多くは私同様、FSBによるウクライナ工作隊の仕業という説には懐疑的です。その理由は私が感じていたこととほとんど一緒。
たとえば犯人特定の手際がよすぎる点。あれでは事件前からマークしていたとしか思えない。だったらどうして阻止しなかったのか。
翌日の現場検証の映像を見ても、すさまじい爆発だったことがわかります。たった一人の犯行とは思いにくい。
では、誰がやったのか。これもまた決定的な根拠には欠けていますが、具体的な名称まで出ているものとしては、国民共和国軍犯行説が浮上しています。
国民共和国軍がやったと言い出したのは、ロシアの下院議員だったイリヤ・ポノマレフです。ポノマレフは2014年クリミア併合に唯一反対票を投じた国会議員であり、以降迫害を受けて、2016年ウクライナに亡命。
当然、ウクライナ侵攻にも強く反対し、ダリア・ドゥーギナの爆殺については、国民共和国軍がやったと指摘して、国民共和国軍の存在を広く知らしめました。
なぜイリヤ・ポノマレフはこのことを知ったのかと言うと、国民共和国軍のリーダーとコンタクトをとっているからです。
たしかにウクライナ工作説に比べると、納得しやすい点があります。ウクライナだってそんなに余裕があるわけではなく、このタイミングで爆発物を仕掛けるとしたら、クリミアでしょう。わざわざロシアに乗り込んで殺すには小物過ぎます。一度として正式な顧問などとして政府に重用されたことのない父娘です。
しかし、国内勢力であれば、とくに娘のダリア・ドゥーギナは、テレビでウクライナ人を蔑視する発言をし、ジェノサイドの煽動までをやっていますから、感情的に「許せねえ」になることもありそうです。この一点において国民共和国軍の方がまだしもあり得そうです。
それ以外の点では疑問だらけで、私はこっちも信用ができないでいます。
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