松沢呉一のビバノン・ライフ

インドネシアのサッカー場で125人が死亡—マッサ・アミニを契機としたプロテストと直接の関係はないけれど、背景はつながる-(松沢呉一)

※死亡者数が間違っていたので訂正しました。125人は10月3日現在の数字です。

 

インドネシアで、サッカーの試合後の混乱で125人が死亡

 

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読む人は少なかったですけど、「ポストコロナのプロテスト」シリーズを160回ほどやったおかげで、その後起きたさまざまをスムーズに理解できるようになりました。ウクライナの民族主義の流れもそうですし、ヒジャブについてもそうです。

そして、インドネシアのこれ。

 

 

この背景には、サッカーのファンたちが暴力を行使し、しばしば敵対するチーム同士で殺し合いに発展するインドネシアの流儀みたいなものがあります(「人が死ぬプロテスト・人が死ぬ十代の抗争・人が死ぬサッカー—ポストコロナのプロテスト[45]」を参照のこと)。

競技場で催涙ガスを使用したために出口に殺到して将棋倒しになって窒息死したのが多いようで、これは警察の判断ミスですが、ほっとくと殺し合いが始まるので、警察は厳しく出るしかなかったという事情があります。

インドネシアでは、政府に対するプロテストもしばしば娯楽としてとらえて暴れるのがいるため、すぐに火炎瓶が飛び、警察署が放火されます。そのため、国際的支持が得られにくいのですが、インドネシアでは宗教規範の法制化が進んでいて、ここでも宗教警察が力を増しています。

今回の悲劇も背景には宗教国家の圧政があって、マッサ・アミニの死と無関係ではありません。

 

 

さらに広がるマッサ・アミニの死に対する抗議

 

vivanon_sentenceマッサ・アミニの死に端を発するプロテストの死者は80名を超えて、この週末はさらに抗議が拡大しており、世界159都市で抗議行動が行われています(このリストを探したのですが、見つからず、本当に159都市なのかどうかは確認できませんでした。この数字にはイラン国内の都市もおそらく入っていて、イランだけで80都市なので、世界159都市は確実に達成できそうです)。

 

 

場所によっては万単位が参加する巨大デモに発展。

 

 

英語圏では「マーサ」と発音していることが多いようです。

これはカナダの放送ですが、モントリオールでもトロントでもバンクーバーでも数万人が参加。

映像で確認できるように、もっぱらムスリム自身が主導し、ムスリムが参加し、イランの国旗が舞っています。イスラムの否定ではないです。デモの規模が大きいのは、カナダにはイランからの移民が多いためらしい。とくに1978年から翌年にかけてのイラン革命の際に国外に出た人たちが多いのです。

その人たちも参加していますが、プロテストを担っているのはその子どもや孫たちであり、ジェネレーションZです。日本でも使われるZ世代のことで、物心ついた時にはパソコンや携帯電話が普及していた世代のことであり、10代から20代です。今回のプロステストでもインターネットが果たした役割が大きくて、だからすぐさま政府はインターネットを規制。しかし、糞ロシアのせいでZの印象が悪くなっていて、使いづらいです。

時の政府を嫌い、自由を求めて国外に出た人たちの子どもや孫たちは今もなお自由を求めていて、親子でプロテストに参加している人たちも見かけます。なのにどうしてソ連時代の圧政を嫌って国外に出たロシア人の子どもや孫たちの中から、自由を抑圧するプーチン支持がああも出てきてドイツでデモをやっているのか不思議ですが、国外に出た人たちの中に、スパイを仕立てて、新たな侵略の足がかりにするロシアのやり方が成功しているってことでしょう。

 

 

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