「ヤリマン映画の傑作」との呼び声高い「やりまんハンター」完成—「聲の形」と「やりまんハンター」[中]-(松沢呉一)
「幻のミニスカJKを追い求める日々—「聲の形」と「やりまんハンター」[上]」の続きです。
もはや誰も完成すると思っていなかった「やりまんハンター」が完成
このまま完成せずに「幻の作品」として語り継がれることを狙っていると目されていた横須賀歌磨呂/原案・脚本・主演、福田光睦/監督の映画「やりまんハンター」がまさかの完成。
「やりまんハンター」公式サイトより(以下のスチール写真も同)
面白いかどうかはさておき、ともあれめでたい。「面白いかどうかはさておき」なんて書くと、「面白くはない」と言っているようですが、試写会で観たら、予想に反して面白かったのです。「予想に反して」ということは、まるで期待していなかったようですが、まったく期待してませんでした。
前回書いたように、もともと私はフィクションはフィクションらしい方がいいとの思いが強くて、噓臭いもの、作り物っぽいものが好きです。対してノンフィクションは事実に基づくべきで、ノンフィクションで平気で噓をつける出版社を信用することはできません。
フィクションでは、現実と離れた飛躍を楽しみたい私にとって「聲の形」にハマったのは異例であり、その無理が祟って、「やりまんハンター」がこの上なく面白かったのかもしれない。
「無理が祟って」なんて書くと、たまたま私だけが特別に今のタイミングで面白がれただけのように思われそうですが、私以外にも面白がれる人は多いと思われます。
※「やりまんハンター」公式サイトより、厳しく演技指導する福田監督。あの野郎、公式サイトに自分の写真をほとんど出しておらず、これが唯一の写真かな。
怪優たちの宴
どこに面白みがあったのかについては、パンフに原稿を書いたので、そちらを読んでいただきたいのですが、なんと言っても出演者たちの貢献が大きいです。
全員シャブやシンナーをやっているだろと思わせる怪優揃い(コカインやヘロインのようなシャレたもんではない)。なんて書くと通報されそうですが、シャブをやっているのは石丸元章だけです。「やっていた」ですが、シャブ中はまたいつやるかもわからない。
ヤリマンとナチスに一家言ある私としては、そのふたつのテーマに文字数を使ったため、パンフの原稿では、石丸元章を筆頭に、佐々木孫悟空やよしえつねおの名前しか出せず、ここでもう少し出演者について補足しておくことにします。
AV女優は女優ではありますが、ただの女優とは違って、「AV」「セクシー」「エロ」という言葉なしで女優と呼ばれることはあまりない。それと同じくこの映画には映画には出ていても、「俳優」と認識されている人はほとんど出てません。リカヤ・スプナーくらいじゃなかろうか。あとの出演者たちはいわば素人であり、そのことがマイナスになっておらず、この映画最大の魅力を作り出していました。次から次とおかしな人が出てきます。サーカスや見世物小屋みたいな映画。
まるで期待していなかった石丸元章と違って、ある程度の予想がついていた鳥居みゆき演ずる異常なキャラは誰にも真似ができない境地に至っていて、「鳥居みゆきはすげえな」と思いました。
※「やりまんハンター」公式サイトより、出演者の一部
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