松沢呉一のビバノン・ライフ

銭湯と板場荒らし—スーパー銭湯で大きな被害があっても組合銭湯では小さな被害しか出ない-(松沢呉一)

 

報道はスーパー銭湯と組合銭湯をしっかり区別すべし

 

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以下の報道の中身を観れば「スーパー銭湯」が舞台であるとわかりますが、タイトルも、それに合わせて「銭湯」ではなく、「スーパー銭湯」と報じた方が適切だと思います。両者は利用者の層も利用方法も行政上の位置づけも別もんですから。

 

 

最後に「コーヒー牛乳の代金しか持って行かないこと」が対策であるかのようにまとめていますが、それが有効なのは組合銭湯(浴場組合に加盟している一般の銭湯のこと)。「若い頃通っていたので懐かしい」のも組合銭湯。両者を区別した上での犯行が行われているのに、なんで区別しないですかね。「若い頃通っていた銭湯とは違うスーパー銭湯特有の事情が被害を生んでいる」ということを理解できていないのだと思います。番組全体が台無し。

ここを区別しないと、あたかも組合銭湯が危険かのように思われます。

「スーパー銭湯だからやられた」と思われる点はいくつかあります。例えば合鍵。スーパー銭湯は営業時間が長い。朝早くから夜遅くまでやっています。客数が多いので、その間にロッカーの鍵を持ち出して外に出て合鍵を作って再入場しても怪しまれない。それができない対策をしているスーパー銭湯もあるでしょうが、現にやられています。

その点、組合銭湯は原則夕方から夜の営業であり、客数も少ないので、一日に二度入場したら気づかれますし、せっかく作った合鍵のロッカーに金を持った客が来ないかぎり、合鍵が無駄になります。

 

 

組合銭湯にはカードを持ってこない人が多いはず

 

vivanon_sentence言われるまでもなく、組合銭湯は「貴重品を持ってこないように」と呼びかけていて、実際に、仕事帰りの人やカードを使う予定がはっきりとある場合を除けば、キャッシュカード、クレジットカードを持ってこない人が多いかと思います。

私自身、何かのついでに立ち寄る場合を除けば、カードは持って行かず、せいぜい千円か二千円しか持っていきません。私の場合は遠い銭湯に行くことがあるので、交通費だけは必要ですし、ついでに買い物をすることもありますけど、それ以上は持っていかないのは防犯のためという意識も少しはありつつ、必要がないからです。

被害総額が億単位になるには、何万、何十万人もの被害者が出なければならず、個人の出来心ならともかく、窃盗団は組合銭湯を狙わないでしょう。

その点、スーパー銭湯ではそんなわけにはいかない。入浴料金以外に金を使うことが前提であり、「入場料だけ持って来てください」なんてスーパー銭湯側は言わない。多くの場合、他の人と誘い合って行く場所ですから、恥をかかないように、カードを持っていくし、万札の一枚は持っていきたい。

スーパー銭湯にしても、板の間稼ぎの集団がいて、億単位の被害額に達していたのは驚きではありますし、狙われるのは女湯のみというのは、言われれば納得ではあれ、やはり驚き。

 

 

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