脱衣場や洗い場に異性のスタッフが入ってくる問題と昆布湯と入浴剤—東京の天然温泉の秘密-(松沢呉一)
入浴施設の異性のスタッフが脱衣場や洗い場に入ってくること
銭湯の清掃には一家言ある私でありますから、この報道に触れないわけにはいかんでしょう。
銭湯でもスーパー銭湯でもサウナでも(以下、「入浴施設」とまとめます)、経営者やその家族、従業員(以下、「スタッフ」)が、性別を基準にして、営業中の男湯や女湯に入るのかどうかについての統一的なルールはなく、個別の入浴施設のルールがあるだけです。
現実に「男湯に女のスタッフが入ってくること」はそう多くはありません。「女湯に男のスタッフが入ってくること」はもっと少ないですけど、皆無ではありません。
ただ、嫌がる女性客がいるのと同時に、「嫌がる女性客がいるだろう」と考える経営者がいるために、入浴施設では、男のスタッフは営業時間中は女湯には入らないようにしていることが逆との比較として多いだけです。
ということを正確に伝えておかないと、銭湯に行った経験の少ない人は誤解しかねない報道かと思いました。
男女の客の違いが反映されている
男のスタッフが女湯に入ることがある入浴施設はおもに番台が残っている組合銭湯です。スーパー銭湯やサウナではまずないのではなかろうか(ここは自信がない)。
ロッカーの上にゴミが放置されていたり、床が濡れていたり、足拭きがズレているのを見つけたら、番台を降りてゴミを片付け、床を拭き、足拭きを直します。その時間に動けるスタッフが他にいなければそうするしかない。
見ようと思えば番台から見えるわけですから、今さら客は裸を見られて恥ずかしいとは思わない。恥ずかしいと思う客はこんな銭湯に来ない。だから番台が消えて、脱衣場や洗い場が見えないフロント方式になってきています。
人間、慣れるってもんですが、慣れる機会が減ってますから、嫌がる人は増えているはずで、客の裸が見える番台はさらに減っていきましょう。
「銭湯と板場荒らし—スーパー銭湯で大きな被害があっても組合銭湯では小さな被害しか出ない」に書いたように、50代以上のおばちゃん、おばあちゃんが男湯に入ってきても全然私は気にせず、むしろダベるのが好きですが、「女子高生が男湯に入ってくる銭湯[銭湯百景 2]」に書いたように、若い女子だと緊張します。「チンコの皮はむいておいた方がいいかな」とか(包茎に戻す計画には失敗したので、むけてますけどね)。
一部スーパー銭湯やサウナでは、垢すりのサービスがあって、韓国だと男湯はおっちゃんですが、日本ではおばちゃんです。タオルで股間は隠しますし、おばちゃんなので、ほとんどの人は気にしない。気にする人はやってもらわないだけですが、「こういうもの」という認識ができていれば、相手が男でも女でも平気じゃないかとも思います。
今も若い女子がフロントに座っている銭湯がありますが、昔は看板娘が番台に座っていても、なんとも思わなかったんじゃないですかね、さすがに高校生くらいだと、同級生が番台にいるのはイヤだったかもしれないけれど。
つまり、客の意識が反映されているわけで、「女湯に男性清掃員が入ってくること」より「男湯に女性清掃員が入ってくること」の方が多いのは、謎でもなんでもなく、客の決定です。
✳︎「東京銭湯マップ」より。東京都内にはもう462軒しか組合銭湯が残っていないですが、このうち番台があるのは76軒。意外に多いですが、番台の脇にパーティションが置かれて、脱衣場の一部しか見えなくなっている銭湯も多いので、「昔のまんま」という銭湯は1割か、それ以下かと思います。
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