松沢呉一のビバノン・ライフ

COP27開催中だが、これといった成果はなさそうで、COPの予算で武器を買ってウクライナに贈与して戦争を終わらせた方が地球環境のためになる-(松沢呉一)

 

COP27開催中

 

vivanon_sentence11月6日から18日までエジプトで開かれているCOP27では、上から5番目(かどうか知らんけど)くらいに重要なテーマとして「戦争と気候変動」という問題が論じられています。

いつの時代も戦争は起きていて、今だってウクライナ以外でも起きてますから、戦争がひとつ増えたくらいで、CO2の排出量が激増するってことはないだろうと思っていたのですが、無視できるほどは少なくないようです。

 

2022年6月23日付「DW

 

4ヶ月以上前の記事で、G7サミットを控えたタイミングで書かれたものですが、ほとんど現在と同じでしょう。

環境に対する二次的な影響はさらに大きい。例えば、ヨーロッパはエネルギー危機になっていて、天然ガスが確保できなくなったために、いくつかの国は石炭や石油による発電に頼るしかなくなりそうです。

また、ウクライナ産の小麦がスムーズに輸送できなくなったことが、気候変動による農作物の不作に加わって、食糧の奪い合いの要因となり、次の戦争を生み出すことにもなりそうです。これがまた気候変動の解決を遠ざけます。

これらはなお不確定なところもありますが、関心を持っていかれたことによる影響はすでに確実に出ているでしょう。戦争の話題が優先されて、本来だったら報じられるべきことが飛ぶ。プーチンを見ていると、「こんなクソ野郎一人も片付けられない人類に、気候変動のような難しいテーマを解決できるわけがねえだろ」との諦めにもなります。

いくら論じても、ロシアがそれらを無効化しますから、COPを開催する予算で武器を購入してウクライナに寄付した方がいいと思います。

 

 

何が気候変動なのかもわかっていないらしき日本の報道

 

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COP27を開催しているためでしょうが、気候変動というテーマに深入りしないようにしているとしか思えない日本のメディアもこの時期は積極的に見えます。

 

 

おかしくね?

「洪水、旱魃、ハリケーン」の3つを気候変動による現象として挙げて、洪水の具体例としてドミニカがまず出てきます。しかし、死者6人ですから、ちいとも深刻さが伝わらない。交通事故でも火事でも一家心中でも時々そんくらい死んどるじゃろ。一家心中ではそんなに死なないか。

もっと適切な例があるだろうに。パキスタンの歴史的洪水は時間が経ちましたが、今も感染症や毒蛇で死者が出続けていて、毎日6人くらい死んでいるでしょう。パキスタンの場合、二次被害の怖さも見せられますし、その原因の一つはヒマラヤの氷河が溶けていることが挙げられて、今後しばらくこういうことが繰り返されること、それが終わったら今度は絶望的な旱魃が来ることが予想できることなど、いかに事が深刻かのサンプルとして最適です。

続いてインドが出てきます。しかし、大気汚染です。温暖化がどこかで関係している可能性はありますが、原因は「工事現場の粉じん、自動車の排ガス、畑の野焼きの煙」とあって、どれも気候変動と関係ないべ。

 

 

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