京都橘高校吹奏楽部のどこに魅せられたのか—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[11]-(松沢呉一)
「できなくはないにせよ、2時間も踊りながら演奏するのは勘弁して欲しいというのが米国のマーチングバンド—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[10]」の続きです。
全日本マーチングコンテストの京都橘高校吹奏楽部
マーチングバンド一般の話にずれて長くなりましたが、そろそろ元に戻って、京都橘高校吹奏楽部がなぜ私にとって魅力的だったかについてまとめておきます。
以下は昨年の全日本マーチングコンテスト高校以上の金賞受賞チームです。京都橘高校吹奏楽部も入っています。
出番前に、顧問の教員やドラムメジャーが、マスクをするか、手で口を覆いながら話しています。観客も飛び飛びしかいません。関係者のみ入場可だったのでしょう。ラッパの人たちはマスクができないし、どうしたって唾液が飛びます。マーチングバンドの感染対策は難しい。教員や関係者以外は高校生ですから、感染しても大丈夫ですけどね。
これはスタジアム・スタイルなので、重点はきちっとした動きによるフォーメーションです。ローズ・パレードではことごとく演奏者のダンスを入れていた日本のマーチングバンドですが、あれよりダンスは控えめ。
東京農業大学第二高等学校吹奏楽部のカラーガードがシンバルを持って踊っているのが面白かったですが、東京農大はダイコンだろ。
ドラムメジャーやカラーガード以外が踊る学校もありますが、演奏者が演奏しながらダンスをするのは、やはり京都橘高校吹奏楽部が顕著。あとは玉名女子高校吹奏楽部です。
たまたまかもしれないけれど、この二つのチームは、出演直前の確認事項で「笑顔」を挙げていたのが印象的でした。米国のマーチングバンドでスタジアムでも笑顔が必須と考えているのは皆無ではなかろうか。これもマーチに重きのある日本の特性。戦地の音楽ではないのです。
少なからず知っている曲が演奏されています。福岡県の精華女子高校吹奏楽部がフレーズをアレンジして入れ込んでいた「グリーンスリーブス」は民謡発ジャズの定番ではありますが、退廃方向の曲ではないです。精華女子高校吹奏楽部はジャージです。非ミリタリー系です。
出雲北陵高等学校吹奏楽部の「インターナショナル」はマーチングバンドとしては珍しいですが、ソビエト赤軍マーチングバンドがよくやってました。赤軍にマーチングバンドがあったのかどうか知らんけど。
この編集では、京都橘高校吹奏楽部の方がわかりやすいですが、京都橘高校吹奏楽部と玉名女子高校吹奏楽部のどちらもピッチリとフォーメーションを決めたあと、キャーという嬌声とともに、軽快、軽妙、退廃方面に転じてます。その開放感がサイコーです。
✳︎本年の全日本マーチングコンテストは11月10日・大阪城ホールで開催されたそうです。
不健康な歓楽、享楽、退廃
私が台湾での京都橘高校吹奏楽部に注目したのはあばずれが混じっているからです。そのことを確認してみます。
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