松沢呉一のビバノン・ライフ

京都橘高校吹奏楽部と島根県立出雲商業高等学校吹奏楽部の比較—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[付録]-(松沢呉一)

京都橘高校吹奏楽部のどこに魅せられたのか—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[11]」の続きです。

「ビバノン」では音楽ネタは人気がないのですが、「オレンジの悪魔」シリーズは大人気。台湾で大きな話題になってましたし、それを受けて日本でもボチボチ話題になってましたが、「踊るマーチングバンドは日本では珍しくないが、米国では珍しい。両国の違いはどこにあるのか」まで突っ込んでいる記事はなく、「別基準で見れば米国のマーチングバンドもカッコいい」という見方を提示している記事もまずなかったでしょうから、「ビバノン」に集中したのだと思われます。では、その勢いで、付録編を出しておきます。

 

 

路上ライブとマーチ主体のマーチングバンド

 

vivanon_sentenceあんまりよくはわかってないですが、ここ数年、優里とか竹中雄大(Novelbright)とか、路上ライブを契機にして人気が出たミュージシャンが続出しているためか、あるいはコロナでライブハウスの活動が制限されたためか、路上ライブをやっている人の数が増えているような気がします。

その時にカバー曲をやっていると、つまらんなと思うのですが、人気曲のカバーをやった方が食いつきがいいらしい。そりゃ、通りすがりの人たちにしてみると、ミュージシャンにはとっかかりがないので、知っている曲をやってくれないと接点がない。歌がうまいとか、曲がいいとかは、通りすがりではなかなかわからないもんです。

耳に馴染んでいる曲で足を止めさせて、そこからオリジナル曲に持っていき、さらにはライブハウスまでひっぱっていって、そこではもうわかっている人たちがメインなので、オリジナル曲だけで構成する。

日本国内だったらもうオリジナルで人が集まる竹中雄大でも、国外になるとカバー中心になります。

 

 

 

これとマーチングバンドの選曲は重なります。マーチを中心に考えると、不特定多数の観客が知っている曲をやった方が食いつきがいい。

路上ライブで同じ選曲だと、どうしても似たような雰囲気になってしまうので、その中でも違う色を出していった方がいいように、マーチングバンドも、選曲で色をつけた方がいい。どいつもこいつも「シング シング シング」やスターウォーズのテーマじゃつまらんべ。

「うちはスウィングしかやらない」「うちは最新ヒット曲しかやらない」「うちはアニメのテーマソングしかやらない」「うちはプロテストソングしかやらない」といったように、カバーでも色をつけることはできるはず。プロテストソングしかやらないマーチングバンドはめったに呼ばれないですが。

 

 

島根県立出雲商業高等学校吹奏楽部の声

 

vivanon_sentenceと最初は思っていたのですが、動画を他数観ていくと、同じ曲をやっても違いが見えてくるのが面白かったりもします。

例えば島根県立出雲商業高校吹奏楽部。もともと京都橘高校吹奏楽部のフォロワーとして始まったらしく、「圧倒的に女子が多いメンバー構成」「ミニスカートのコスチューム」「ダンスのスタイル」など似ているところが多いのですが、違いもあります。

京都橘高校吹奏楽部は100年前のニューヨーク・パリ・ベルリンを踏まえている—「オレンジの悪魔」にキャバレーを見た[12](最終回)」に、京都橘高校吹奏楽部と島根県立出雲商業高校吹奏楽部は声の出し方が違うと書きましたが、それがわかる動画を出していなかったことに気づいて、付録編として出しておくことにしました。

以下です。

 

 

 

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