松沢呉一のビバノン・ライフ

イスラム革命防衛隊(IRGC)が国民に向けてマシンガンを乱射した日、カタールのワールドカップで国歌を沈黙で聞き流したイランチーム-(松沢呉一)

 

カタールのワールドカップでプロテスト

 

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米戦争研究所のサイトを見ている方々はお気づきのように、ウクライナ戦争関係の情報の間に、イラン情勢についての情報が混じるようになり、今ではほとんど毎日「イラン危機」の更新がなされています。

北朝鮮と並んでロシアを支援するならず者国家という意味で注目せざるを得ないということもあるのでしょうし、イスタンブールでのテロとその報復としてクルド人武装勢力への砲撃が続くトルコ情勢ともいくらか関係しているかもしれないですが、イラン自体が内戦間近と言っていいような緊迫した状況に入ってきているので、戦争研究所の研究対象です

その戦争研究所によると、西アゼルバイジャン州マハバードでの抗議行動を制圧するためにイスラム革命防衛隊(IRGC)が送り込まれたとのことです。その結果、この週末に少なくとも数十名が虐殺されたようです。マハバードはクルド人の多いエリアであり、マッサ・アミニもクルド人です。

そんな中、ワールドカップ・カタール大会の2日目、イングランド対イランの試合が行われ、イングランドが勝利で初戦を飾りました。

試合前、国歌が流れる中、イランの選手たちは沈黙を続けました。

 

 

会場では多数のプロテストTシャツが見られ、てっきり私は国外に出ているイラン人だと思ったのですが、イランから来ている人たちが、顔を出してインタビューに答えている報道がありました。国に戻ったら拷問されて、最悪殺されるかもしれない。もちろん、選手たちも同様です。

そのため、「騒ぐと選手たちが捕まるので、そっとしておいて欲しい」と言う人もいて、意見はさまざまですが、チームは選手たちの行動を支持しないと声明を出したために、そっちに対する批判が国内では高まっています。

さらに、イングランドなどいくつかのチームのキャプテンたちが、 LGBTへの弾圧を続けるカタールへの批判を込めて、レインボー・ワンラブ・アームバンドを腕章として着用することを提案。対してFIFAは罰金を課すと脅しますが、キャプテンらは罰金を払って着用すると宣言してFAFAは罰金を撤回しながらも、その腕章を認めず、LBGTのみならず、多様性を否定しているイランを批判する意味も加っての騒ぎになっていて、まだまだ続くのかも。

「独裁者とそれに取り入る一部の人々が警察や軍を味方につけて圧政を敷き、国民の多くはそれに反対しているが、反対すると殺されるために黙っているしかない」という独裁イメージと、イランの現実は近くて、だからチーム全体が一丸となって抵抗をする。

多数派がプーチン支持、あるいは無関心のロシアではこうはならない。抵抗するとしても、数名が国歌が流れる中で沈黙するだけでしょう。仮に中国が台湾に攻め込んだ後でも、中国の選手は全員が国歌を喜んで歌うと思います。最近ちょっと空気が変わってきていますが、大きくきは変わらないと思います。

 

 

女優2人も逮捕された

 

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実際にこの週末にイランで何があったのかは正確にはわからないのですが、以下はマハバード。

 

 

一晩中、マシンガンが乱射されたようです。

 

 

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