レインボーの腕章をめぐるドイツ代表チームのプロテスト—日本代表の歴史的勝利とともに見ておきたいこと-(松沢呉一)
ドイツ代表のプロテスト
ワールドカップのドイツ戦で、日本代表がほとんど誰も予想していなかった逆転勝利を成し遂げたわけですが、ヨーロッパでは、ドイツ代表を讃える声も高まってます。
ドイツ代表はウォームアップの段階ではレインボーカラーを身につけ、試合に先立って口を塞ぐポーズをしたことを「Guardian」は長く記憶される行為として評価しています。他のメディアも同様。
また、この日、観戦していたナンシー・フェイザー内務大臣が彼らに同調するレインボーの腕章をつけていたように、ドイツは政府単位でこの行為をサポートしています。
「レインボーのワンラブ腕章」については「イスラム革命防衛隊(IRGC)が国民に向けてマシンガンを乱射した日、カタールのワールドカップで国歌を沈黙で聞き流したイランチーム」で軽く触れましたが、今回のワールドカップでの見どころ(?)のひとつです。
その目的を明示しているわけではないですが、ヨーロッパの国々ではカタールで開催することに対しての批判があって、それがきっかけのひとつとなって、キャプテンの腕章をレインボーのハートとワンラブの文字による腕章にする動きが起きます。これをFIFAが許可せず、制裁を加えるとしたために反発し、レインボー腕章はつけなかったものの、今回の行動となりました。
ドイツ以外の国でもサッカーファンによるカタール大会ボイコットの動きがあって、サッカーの試合を中継するのが恒例になっているバーやパブでも今回は中止にした例もあるようです。ヨーロッパで戦争しているのに、そんな気分ではないというので、ワールドカップ熱が高まらないという事情もあるんでしょうが。
FIFAのポリシーに合致した腕章が政治的とされる理不尽
FIFAとしてはレインボー腕章を政治的メッセージと見做したわけですが、FIFAを批判する人たちが言っているように、FIFAは差別に反対することをポリシーとしていて、レインボーはその表示であって、それを封じることや、カタールを開催国とすることこそが政治的であり、自らの規約にも反します。
以下はFIFA規約(FIFA STATUTES)より。
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