中国政府がゼロコロナを撤回するために必要だったこと—なんだか引っかかる中国の動き[下]-(松沢呉一)
「規制緩和の方針はすでに決定していると思える—なんだか引っかかる中国の動き[中]」の続きです。
ゼロコロナの転換は確定的
昨日、「規制緩和の方針はすでに決定していると思える—なんだか引っかかる中国の動き[中]」をだしたすぐあとで、こんな報道が流れてました。
外報はもっと早くからこのことを伝えてましたが、私は見逃してました。
孫春蘭副首相がすでに新型コロナはそれほど危険ではないことを公式に認めたことの意味は大きい。
このまとめで言っているように、民衆の抗議を抑えるために、政策転換をせざるを得なくなったように見えますが、前回確認したように、もっと前から計画されていたことだと私は見ています。方針転換したい政府としては、その名目が欲しかったのです。
と私は以前からそれを疑っていて、今回まとめてみたわけですが、事が急速に進んでいて、せっかく早くから「これは中国政府の目論みだな」と見抜いていたことが霞むので、とっとと最後まで出しておきます。
ネットも路上の行動も規制をゆるめている?
中国政府は方針転換したい。さもないと経済的に国は破綻します。金が儲かれば国民は黙りますが、それができなければ立ち上がる。
しかし、国民に植えつけた新型コロナの恐怖心が浸透しすぎ、撤回には至れない。試しにちょっとゆるめてみたら、感染者が増え、国民の恐怖心が高まって、慌てて撤回。現実に抗体のない人が圧倒的に多い中国では、緩和をすれば急速に感染者が増え、基礎疾患のある人と高齢者から死亡者が続出するのは目に見えてます。
どうしても私らは、「ゼロコロナを維持する共産党政府」と「ゼロコロナをやめたい国民」という対立を見てしまうのですが、大多数の国民はゼロコロナを支持していて、規制緩和を怖がっています。
日本でもPCR検査を徹底し、強制力をもって店の営業や人々の行動を規制することを求めた人たちが多数いて、彼らはそのためにあっさり自由を放棄しようとしました。私のように「適当でいいだろ」なんて言っていたのは圧倒的少数派。まして情報が少ない中国では新型コロナへの恐怖は強くて、いかに独裁であれ、この国民感情を無視して、方向転換はできない。
共産党政府は国民からの「ゼロコロナ政策をやめろ」という声を醸成しようと考えたのではなかろうか。
そう疑える根拠はいくつかあります。
「数が多すぎて削除できない」ということらしいですが、今回はインターネットの削除が遅れていて、それで各地に拡大してしまったとされています。規制しきれないのではなくて、これもゆるめているのではないか。
また、とくに都市部については警察がおとなしい。
この「看中国」は法輪功系チャンネルかと思います。後半のあの彼が拘束されても救出されたシーンは一般の報道でも流れてましたが、その前の演説まではこれで初めて観ました。はっきり政府批判してますし、そもそも彼はマスクをしてません。一方で、広州市では相変わらずマスクをしていないだけで女性らが暴行された動画が出てましたが、重慶市では連行もされず。
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