松沢呉一のビバノン・ライフ

インドネシアで婚姻外セックスが禁止され、ロシアで同性愛プロパガンダ禁止法の改正案が成立—道徳の法制化が進む[上]-(松沢呉一)

 

 

インドネシアで婚姻外セックスが禁止された

 

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私は今のところ信用していないですが、イランでは道徳警察がなくなるかもしれない

しかし、世界的には道徳が強化され、その法制化が進んでいるように見えます。インドネシアでは、婚姻外セックスを禁止する法律が議会を通過(正確には刑法にそのような条文が組み込まれる)。大統領の署名が必要なので、まだ発効はしていないですが、この雲行きだとジョコウィは署名してしまいそうです。

インドネシアでは、売買春はこれまでも道徳に反し、風紀を乱す行為として取り締まられることがありましたが、今回の法律で違法性がより明確にされます。

外国人にも適用されますから、日本から未婚のカップルがインドネシアに行ってセックスすると捕まります(これ以下の記述は微妙で、外国人が対象になる可能性はゼロではないにしても、相当に低い。詳しくはこちらを参照してください)。内縁関係でも愛人関係でも不倫関係でもアウト。「この後結婚する」という証明は容易ではないことが多いでしょうから、婚前旅行でもアウトかと思われます。

未婚の男女が同居することも禁止ですので、日本からセックスする関係じゃない男女がインドネシアに行き、ツインの部屋に泊まっても捕まる可能性がありそうです。部屋が取れないなど、なんらかの事情がないと、いくら仲が良くても、男女で同じ部屋に泊まることはないと思いますが。

懲役刑もありますので(最長1年)、くれぐれもインドネシアに行く人は注意のこと。未婚カップルで行くのはやめた方がよく、売買春もいきずりのセックスも避けた方がいい。セックスに行き着きやすいので恋愛も控えましょう。

ただし、通常は適用されないのではないかとも言われています。もともとインドネシアは一夫多妻が行われていた国ですし、どうせ政治家や金持ちは今も愛人を抱えたりしてましょう。

✳︎2019年9月25日「Meduza」 3年前に法案が出ていた時の記事。写真はそれに対する反対闘争。法案の中身は当時とほとんど同じですから、何かが変化したのだと思われます。コロナ禍の影響かも。

 

 

ロシアでは「同性愛プロパガンダ禁止法」が改正された

 

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インドネシアの婚外セックス禁止法のメインターゲットは同性愛者ではないかとの説が出ています。同時に同性愛禁止法が出ていたらしいのですが、そちらは成立せず、こっちで取り締まるつもりだろうと。同性婚が認められていないので、同性のセックスはすべて違法。

同性愛者の中には同性愛禁止法が不成立だったので安心したのがいたらしいのですが、朝三暮四の猿かよ。こういう猿を騙すために、わざと通す気のない同性愛禁止法を釣りとして出したのではなかろうか。

なお、ほかにレイプや母体の危険など一部の例外を除いて、中絶が禁止され、国家や元首を侮辱することも禁止となります。

以前確認したように、インドネシアでは宗教道徳が強化されていて、この法案は前にも出されているのですが、反対が強くて、流れました。インドネシアでは学生たちの激しいプロテストが名物ですが、今回は大きな行動はなかったようで。コロナ禍を経て弱体化しているかもしれない。やはりコロナ禍によって、強い国家の強い姿勢を求める人たちが増えてしまっているのではなかろうか。

ちょうどこれにリンクするかのように、ロシアでは、11月24日に「同性愛プロパガンダ禁止法」の改正案が下院を通り、12月5日にプーチンが署名。

 

プーチンが署名したことを伝える2022年12月6日付「DW」ロシア語版 

 

 

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