「あんたらこそ洗脳されている」と言うロシア人にどう答えるか—洗脳とは?[4]-(松沢呉一)
「「あなたは洗脳されていますか」と問うことの無意味—洗脳とは?[3]」の続きです。
「アメリカ人こそ洗脳されている」と主張するロシア人
「ロシア人にインタビューしてみた」で、ロシア人が「アメリカ人は洗脳されている」と言っています。ロシアの公認情報だけを信じているらしき人が、インターネットで西側の情報を得ているロシア人たちも洗脳されているのだとしています。
「いや、こっちは洗脳されていない。ロシア人こそ洗脳されている」と返しても不毛であることは前回確認した通り。
では、これにどう有効な反論ができるのかを考えてみましょう。
中国から始まった洗脳という言葉
「洗脳とは何か」ってところから始める必要があります。
Wikipediaにはこうあります。
洗脳(せんのう、英: brainwashing)は、強制力を用いて、ある人の思想や主義を、根本的に変えさせる事。
日本語の「洗脳」は英語の「brainwashing」の直訳であり、英語の「brainwashing」は中国語の「洗脑/洗腦」の直訳である。アメリカCIAが朝鮮戦争の捕虜収容所で行われた思想改造について報告書を提出したことをきっかけとして、またその後にジャーナリストのエドワード・ハンターが中国共産党の洗脳技法についての著書を著したことで広く知られるようになった。
始まりは中国語なのか。そこから英語でbrainwashingと訳されて、それをタイトルにしたエドワード・ハンターの著書が日本に入ってきて洗脳と訳されたという流れ。
このあと具体例がいくつか出ていますが、もっぱら収容所のような場所で行われる思想改造です。
対して「ロシア人は洗脳されている」といった指摘における洗脳はもっと緩くて、情報統制がなされ、客観的な判断ができなくなった状態を指しましょう。現にロシアでは、『ウクライナはネオナチに支配されていて、NATOは虎視眈々とロシアを侵略しようとしている」といった情報だけがテレビや新聞で流布して、戦争を戦争と呼ぶだけで捕まり、政府の方針を批判する人々も捕まって、政府に従わないメディアは潰されます。ここにおいて強制力が働いています。
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