松沢呉一のビバノン・ライフ

ラトビアでの放送免許(ケーブルTV)が取消になった経緯—ロシアを脱出したTVレインがまたも存続の危機[1] -(松沢呉一)

 

ラトビアに移ったTVレインに何が起きているのか

 

vivanon_sentenceロシアの独立系メディアをチェックしている方はお気づきのように、今もっとも熱い話題は、モスクワのショッピングモールが燃えたことより、ウクライナで停電が続いていることより、TVレインです(とくに「メデューザ」では)。

ロシアの独立系テレビTVレインはロシアではあるまじき放送をしていたため、刑事訴追寸前まで至り、最後の放送をもって活動を中止して、メンバーの多くはロシアから脱しました。

主要メンバーはラトビアに移住し、7月にネット放送として再スタートしたことは「ビバノン」でも見てきた通り。

ところが、そのラトビアでも新生TVレインは危機に瀕しています。ラトビア政府はロシアのメディアを受け入れる姿勢を明らかにしていて、TVレインのみならず、多数のメディアおよび個人、また、西側メディアのロシア支局がラトビアに拠点を移しており、他人事ではないため、独立系ロシア・メディアがこれを盛んに取り上げています。

何があったのか。何があっても日本にいる私らの知ったことではないですけど、私がここまで書いてきたこととも関わる重要なテーマがこの騒動の背景にはありますので、詳しく取り上げることにしました。

「洗脳とは?」シリーズで出そうと思ったのですが、長くなるので、別建てにしました。

✳︎念のため、Googleマップでバルト三国の位置を確認。ラトビアの南がベラルーシで、さらに南がウクライナ。エストニアとラトビアはロシアと国境を接しているだけに危機意識は強い。

 

 

事の経緯を確認

 

vivanon_sentence12月1日、TVレインのレギュラー出演者であるアレクセイ・コロステレフの「失言」がラトビアやウクライナですぐさま問題となり、翌日、TVレインは不適切だったと謝罪し、アーカイブを非公開に。同日、ラトビア政府のメディア管理部門NEPLPがTVレインを「国家安全保障と公共秩序に対する脅威」と見なします。

TVレインはすぐさまコロステレフを解雇。これを不当として、TVレインの中心的スタッフ3名が抗議の退職をします。ロシア時代よりもずっと人を減らしていたでしょうから、4人の中心人物が抜けたのは相当に痛いはずです。

それでも事は終わらず、12月6日、NEPLPはTVレインの放送免許取消を決定ネット放送に免許も何もないだろうと思ったのですが、この取り消しは、ケーブル放送のことでした。翌日、エストニアとリトアニアもこれに続きます。バルト三国が揃ってTVレインに制裁を下したわけです。ラトビアでは8日に取消が発効して、この日からケーブル放送は中止。

この措置は、コロステレフの発言だけが原因ではなくて、これまでの蓄積です。ケーブル放送では、ラトビア語に対応することが条件で、TVレインは9月1日までに整備するとしていたのですが、間に合いませんでした。そのため、罰金となっています(これ自体厳しすぎると思われそうですが、ラトビア固有の事情が関わっています。これについては後述)。

TVレイン側は翻訳機能をつけるには設備に金がかかるために遅れたと言ってます。しかし、前に書いたように、YouTubeの放送でも自動翻訳ができるように設定しておらず、ロシア語のわからない私は新生TVレインを一回しか観てないです(観たとは言えないか)。

これはロシアで放送している時から一貫した姿勢であり、その頃もデモの中継など、説明がなくても理解できる時しか観てませんでした。YouTubeでの自動翻訳の設定は金も時間もかからないですから、TVレインの人たちはロシア語を話せる人しか相手にする気がないと私も思いました。日本のテレビ局でも自動翻訳の設定をしていないことはよくあるのですけど、世界的にロシアが注目されている時期でも世界の視線を無視していました。

今最新の動画を観たら自動翻訳できるようになってます。

 

 

やっとか。

そうしていなかったのは最初だけかもしれないですが、今でもタイトルや概要欄はすべてロシア語です。

 

 

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