ロシア語話者しか相手にしてなかったTVレイン—ロシアを脱出したTVレインがまたも存続の危機[2] -(松沢呉一)
「ラトビアでの放送免許(ケーブルTV)が取消になった経緯—ロシアを脱出したTVレインがまたも存続の危機[1]」の続きです。
どんな発言が問題になったのか
ロシアによるクリミア侵攻のあった時にラトビアに移っていた「メデューザ」が、数日前に、これまでの経緯を時系列にまとめた記事を出していましたので、詳しくはそちらを見ていただきたいのですが、ロシア政府に潰されても蘇ったTVレインが、「こんなことでまた潰れるのか」と嘆かないではいられないくらい、当初は「問題の発言」のどこが問題なのかわかりませんでした。
アレクセイ・コロステレフが生放送中に言った言葉を「メデューザ」の記事から引用します。
動員がどのように行われているか、動員された人々が前線で何をしているのか、どのようにそこに着くかについての情報や証拠があり、ロシア軍の問題について私たちに伝えたい場合、army@tvrain.ruにメッセージを送信するか、テレグラムボットに手紙を書くと、実質的にすべての人に答えます。そして、私たちやTelegramボットに送られた物語の多くは現在公開されています。
自動翻訳のままです。
これのどこが問題なのかわからんでしょ。これによって同僚が解雇されたことが納得できず、連座して辞職したスタッフがいたのは当然です。
コロステレフの発言を問題視する人々は、「ロシア兵に呼びかけて、彼らの意見を紹介しようとしている」と受け取ったようです(本当にそうなのかどうかも私にはわからない)。
対して私は、この発言は「軍や政府に不満を抱くロシア兵やその家族に呼びかけた」と理解しました。つまり、内部告発の呼びかけです。しかし、これはTVレインに好意的的な見方であって、なんにせよ、元の番組を確認しなければわからないですが、アーカイブは消されています。
はっきりしないながら、ここを取り出してみた時にはラトビア側の過剰反応であり、すぐさま謝罪してコロステレフを解雇したTVレインも過剰反応だと思いますが、多数のロシア人を受け入れている国であるラトビアの事情を考えるとわからないではない。そのラトビアの事情を以降詳しく見ていきます。
なお、コロステレフは解雇されたあと、ジョージアに移り住み、ラトビアに再入国することは禁止されています。今回の制裁ではなく、もともと彼は就業ビザがないまま働いていたためのようです。TVレインは違法な労働をさせていたと言えて、他のスタッフもビザのチェックをし直すと移民局が言っています。今回の騒動には、こういったさまざまが付随しているので、慎重に見ておく必要があります。
✳︎2022年12月11日付「メデューザ」 この記事によると、ラトビアの国防大臣アーティス・パブリックスは、TVレインの人たちの「ビザを取り上げろ」とまで言っています。なぜそこまで至ってしまったのかはこれ以降を読んでいただけると少しは理解できましょう。
ラトビアがロシアのメディアを多数受け入れることはトラブルを招きやすい
ここまで何度か書いてきた「ロシア人を受け入れることの難しさ」がTVレインの騒動に見てとれます。
この難しさについて少なくとも「メデューサ」は理解していたらしきことを、「メデューザ」の声明文から読み取ることができます。
メデューサがすでにラトビアで過ごした8年間で、同国当局は私たちの編集政策に干渉しようとはしなかった。私たちはそのおもてなしに感謝しています。メデューサの多くの従業員の第二の故郷となっているラトビアが、民主社会における独立系メディアが果たす重要な役割を認識していることを疑う理由はありませんでした。
2月24日以降、ラトビアはロシアからのジャーナリストを招待し、彼らの専門的な活動とウクライナに対するロシアによって解き放たれた戦争への抵抗のために祖国で長年の懲役刑に直面した。私たちはラトビア当局の決定に満足していました。そして、ソビエト占領のために国の住民がまだ経験している痛みを考えると、彼らはそれがどれほど難しいかを理解しました。
同時に、戦争状況におけるロシアからのジャーナリストの大量到着が紛争につながる可能性が高いことも認識していました。結局のところ、ロシア人によって作成されたメディアは、ほとんどの場合、ロシアの問題に焦点を当てており、この光学系を通じて、彼らは彼らの周りの世界を見ています。これはしばしば、特にロシアが完全に責任を負う戦争中に、外国の聴衆の間で戸惑い、時には憤りを引き起こします。
ロシア語からの自動翻訳のため、3段落目は意味がつかみにくいですが、ロシア・メディアは結局のところロシアを通してしか世界を見ておらず。それが誤解や怒りを起こしやすいってことかと思います。ラトビア語に対応していなかったこともこの意識の反映でしょう。
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