松沢呉一のビバノン・ライフ

拭いきれないロシア中心主義—ロシアを脱出したTVレインがまたも存続の危機[6] -(松沢呉一)

ロシアのウクライナ侵攻についての考え方が民族ラトビア人とロシア系ラトビア人ではまるで違う—ロシアを脱出したTVレインがまたも存続の危機[5]」の続きです。

 

 

洗脳の怖さ

 

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今回の話は「洗脳とは?」シリーズと関わってくるのですが、情報が制限されている全体主義社会で育った人はどうやっても洗脳されています。洗脳されていたことに気づいた点についてはリセットできるとして、気づけないゾーンはそのまま残ります。

例えばロシアに生まれて育った人で、「ウクライナの侵攻には反対」「ブチャなどの虐殺には反対」「動員令には反対」「核兵器の使用には反対」といった各点において反対の人たちがいて、それらはすべて反体制であり、ロシアでは処罰対象ですが、「プーチンが大統領であることには賛成」かもしれない。各論で反対しているだけ。そこまで極端な人はそう多くはないかもしれないけれど、そういうことが起き得るって例です。

日本にいる中国人が習近平のコピーを演じるのも同じだろうと思います。本人としては習近平を支持せず、嫌悪さえしているのだとしても、新型コロナをどうとらえるかという切り口になると、無意識のうちに習近平のコピーになる。全体主義自体は体に染み付いていて、全体主義内の差異があるだけ。

北朝鮮から韓国に入った脱北者が洗脳をリセットするために1年かけるのは当然で、それでもリセットしきれない。

このことを体感しているために、東ヨーロッパや北欧の国々が、表面的には「戦争に反対」ということで国外脱出したロシア人であっても、入国を制限するようになったのは当然でしょう。

✳︎2022年12月12日付「ir.lv」 ラトビアのメディアは意見が分かれています。この「ir」はラトビアの週刊新聞で、この記事では「免許取消は当然」というニュアンスであり、「ロシアのメディアや人がすべてTVレインと同じだと思ってはいけない」と釘を刺しつつ、「敵の敵は味方と思ってもいけない」と書いています。そうはっきりとは書いていないですが、「TVレインはロシアの敵であっても、ラトビアの味方ではないぞ」ってことです。「言われなくても知ってらあ」ってことですが、わかっていても、類似したことを私もやってしまいます。もちろん、すべての点が合致していなくても、合致している点で共闘したり、連携したりすることはできます。そうすると、今度は「あいつらは過去にこんなことをやっているんだぞ」と親切めかして注意してくる人たちがいます。それこそ「すべてが合致していなければならない」との考えにとらわれている人々のおせっかいです。TVレインも評価する点は評価し、批判すべき点は批判すればいいだけかと思います。

 

 

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