不要となった施設が税金を貪り続けるために—Colabo✖️暇空茜[傍流編22]-(松沢呉一)
「Colaboを正義連につなげたのはおそらく矯風会—Colabo×暇空茜[傍流編21]」の続きです。とりあえず現状で追及すべきはColaboの金についての疑惑であって、その背景については広く知られる必要はないでしょうから、ここからは無料記事ではなく、通常の更新とします。
婦人団体が宗教道徳団体と野合
戦前、矯風会と救世軍は、禁酒運動と廃娼運動の2本柱からなる活動で知られていました。敗戦とともに公娼制度は廃止となります。彼らはそれまで「公娼制度がなくなれば売春はなくなる」という主張をしていましたが、何ら根拠はなくて、以降は赤線の時代になります。「赤線とは何か」については拙著『闇の女たち』や「ビバノン」に出した「赤線を正確に記述した公的文書」を参照のこと。
彼らは婦人議員たちと結託して、今度はこれを潰すために売春を禁止する法律の制定に向かいます。この時に彼らがどれだけ悪辣なことをやったのかは「廃娼運動=売防法=純潔運動—道徳派の手口 1」「事実より道徳が大事—道徳派の手口 2」「道徳に反する者の裁きは神の手に委ねよ—道徳派の手口 3(最終回)」「売防法をめぐる消された歴史」シリーズなどを参照のこと。
これが昭和31年(1956)制定の売防法になります。
第一条にこうあります。
第一条 この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする。
道徳規範に基づく法律であることを第一条で明記しているおかしな法律です。キリスト教団体が主導で作られた法律だけのことはあります。かつ、この法律での「女子」(ここでは特に若い世代を意味するのではなく、女性一般)は自らの意思で売春したとしても、保護更生の対象でしかなく、子どもと同じ扱いであることにも留意のこと。
私には差別性の強い法律にしか見えないですが、この法律に婦人議員たちが尽力し、戦前からの婦人運動の流れを汲む人たちも賛成したことを忘れてはなりません。平塚らいてうの時代には、婦人運動と道徳運動を峻別する矜持があったのですが、戦争を経て、婦人運動は道徳運動と化してしまったのです。
売防法によって公金が実質的に宗教団体に流れる仕組みができた
宗教道徳に基づいて、売防法には「婦人相談所」「婦人相談員」「婦人保護施設」の規定が盛り込まれていて、矯風会や救世軍も婦人保護施設を運営。矯風会は宗教法人ではないですが、団体名に「キリスト教」と入っているように、キリスト教団体ではあります。矯風会の保護施設「慈愛寮」は社会福祉法人慈愛会の運営になっていて、別法人なのですが、実質的には矯風会の傘下にあって、場所も同じです。職員も矯風会に関わる人々です。これも委託事業で、実質宗教団体に国と自治体の予算が使われています。
それでも、売防法制定から間もなくは機能していたかもしれないですが、これらの施設は時代とともに本来の役割を終えます。
ちょっと古いですが、以下の数字を見てください。2005年の数字です。
「婦人相談員の概要(厚生労働省)」より
そのために設置されたはずの売春関連の相談は53,726件中の61件のみ。わずか0.1パーセントです。このほとんどは外国人であり、日本人による相談はわずか数例なのです(他のデータからの類推)。「売春関係」には「夫が売春をさせようとする」といったものも入っていて、「売春関係」よりも「婚姻関係」とすべき相談です。それを含めて全国で61件。各相談所で年に1件あるかないか。せ
これ以降、売春関係はもっと少なくなっているはずです。
必要がなくなった施設を生き延びさせる「若年被害女性等支援事業」
この辺については「データが物語る虚偽と詐術—兼松左知子著『閉じられた履歴書』のデタラメ 12」を参照のこと。このシリーズは、新宿区の婦人相談員である兼松左知子が、売春の悲惨さ、業者の悪辣さを強調した著書でいかに悪質な操作をやっているかを解析した内容です。まったくの虚偽は書いていないとしても、まったくの虚偽ではないがために、現実を読み込むことが可能です。
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