松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシア解体をウクライナ国防会議トップが示唆—ロシアによるウクライナ侵攻から1年-(松沢呉一)

 

ロシアの侵攻から1年目に考える

 

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ロシアによるウクライナ侵攻から1年ということで、ウクライナとロシア関連の報道が激増しています。

先日、銭湯でテレビを観ていたら、NHKがラトビアの民族ラトビア人とロシア系ラトビア人との確執を取り上げてました。ソ連がナチスドイツに勝利した記念碑を破壊したことも映像とともに取り上げていて、日本のテレビ番組としては相当に突っ込んだ内容でした。

ただし、難点があって、ロシア系に同情的なトーンでした。これまで小学校では、ロシア系の生徒のためにロシア語も教えていたのですが、これが廃止されたことも取り上げていました。これだけを取り上げると、ただただロシア系が迫害されているようですが、ロシアはロシア語を話す人をロシア人と認定し、迫害されるロシア人の救出のため、ウクライナに侵攻したのですから、ラトビアでロシア語を話すロシア系を警戒するのは当然です。

前に説明したように、記念碑を撤去する法律を制定したのは、そこにプーチン支持のロシア系が集まったためです。そのことも番組では説明してませんでした。

TVレインのことにも触れてませんでしたが、ロシアを脱出してラトビアにやってきたTVレインとラトビア政府が対立して、ロシア政府にも戦争にも批判的なメディアを歓迎するというラトビア政府の姿勢も再考せざるを得なくなっていて、外国人を迎え入れるのは簡単ではないなと実感しています。

日本に避難してきたウクライナ人は2月15日現在2,302人。もうウクライナに帰国した人もいますが、今なお少しずつ増えています。最近は多数のウクライナ人を受け入れているポーランドなどが飽和状態になって支援が限界になり、仕事も見つからないため、これまで踏み切れなかった日本行きを決意した人も多いようです。ポーランドは100万人以上受け入れてますからね。

2千人台でも、日本にとっては異例な対応ですけど、この程度の数字だからいいようなもので、ヨーロッパ各国のように、万単位、あるいは数十万単位になっても受け入れられるのか否か。ウクライナ人だったら万単位になってもなんとかなりそうですが、プーチン体制を嫌うロシア人が万単位来たがったらどうするか。

反政府運動をやって指名手配になったような人々や政府に目をつけられたメディア関係者は受け入れればいいと思いますが、万単位のロシア人を受け入れることについては慎重にならざるを得ないのは、これまで見てきた通り。

ラトビアやジョージアのロシア系住民は、国民の数分の1という単位だし、ドイツも古くからの移民の蓄積で200万人以上のロシア系がいます。

とうてい日本ではそんな数にはならないので、当面はロシア人も受け入れていいと思いますが、もし中国が台湾に侵攻したら、日本も多数を受け入れることになるでしょうから、今からヨーロッパ各国の事情を調査しつつ、シミュレーションをしておいた方がいいかと思います。

✳︎Wikipediaより、「 1万人以上のウクライナ難民を受け入れた国々」。ロシアがトップなのは強制連行や誘拐が含まれているため。つうか、それがメインでしょう。とくに小国で万単位のウクライナ人を受け入れるのは負担が大きいので、日本に来たいウクライナ人はどんどん受け入れたい。

 

 

プーチンが失脚しても戦争は終わらない

 

vivanon_sentence「この1年を振り返る」といった動画を一通りチェックしているのですが、戦況の解説において、防衛研究所の研究員たちと並んで的確な発言を続けてきた小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師のこのまとめはすんなり納得できました。

 

 

 

アフリカ大陸ならいざ知らず、ロシアのような大国が、古典的戦争を仕掛けるような悪夢が起きることを一般の人のみならず、専門家と言われる人々も想定してませんでした。中国が台湾に侵略することにリアリティを持たせるなど、世界の見方を一変させたのです。私の中でも組み替えなければならないポイントが様々あります。

私でさえも早くから言っていたように、プーチンが失脚しても戦争は続き、場合によっては事態は悪化することもあり得るという指摘は、すでに多くの人が了解しているかと思います。「この戦争はプーチンの戦争」という見方は完全に間違っているわけではないですが、プーチンが消えてもプーチン体制は維持されます。

では一体どうすれば終わるのか。

 

 

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