留まるウクライナ人/帰国するウクライナ人—「難民貴族」と罵倒する日本語学校の理事長-(松沢呉一)
図版をつけられない、タグをつけられないなど、またパソコンが不調です。復調してからやります。
ウクライナ避難民を「難民貴族」と罵倒する日本語学校の理事長
なんだ、これ。
「難民貴族」という言葉は、日本語学校でトラブルが生じていると報じたメディアを批判する過程で出てきたようです。「難民貴族の言い分を無条件に信じて報じやがって」ということなのでしょう。
群馬県前橋市の日本語学校NIPPON ACADEMYは、ウクライナ人学生を3ヶ月は授業料免除にし、自立できた学生(収入が得られたということでしょう)には以降3ヶ月分の支払いを求め、それを支払った学生もいる一方、以降も免除と思っていた学生は支払いを拒否。
「収入を得られない間は免除、得られたら免除打ち切り」という条件が明示されている限りは不当とは言えないので、どこまでどういう説明がなされていたのかによりましょう。
それだけの話だと思うのですが、「難民貴族」という表現はねえわ。「家賃もタダ、税金もタダ、渡航費もタダ」なのはわかっていたことであり、2022年3月19日付「上毛新聞」によると、清水澄理事長は「公営住宅で自治体が受け入れた避難民に日本語などを指導することも可能」と言っていて、それを前提に受け入れていたことは明らかです。「留学生の入国制限などで法人としても厳しい経営状況だ」とも言っていることから、「自治体等のサポートがあれば授業料は支払える」あるいは「学校に対しても、国や自治体のサポートがあって、学生が減った分の穴埋めができる」という見込みだったのが外れたのかもしれないですが、学生には関係のないことです。
また、支援金も募集していますから、「その金はどこに行った?」って話です。ウクライナの学生たちに渡していたら、自分らも「難民貴族化」に協力しているのですし、学校が受け取ったのであれば「その分、授業料を無料にしろ」という話、どちらにしても思ったようには集まらなかったのかもしれないですが、これも学生の責任ではありません。
「ウクライナの窮状を前に、今できる支援をしなければ後悔する」とも言っていて、さんざんカッコつけてメディアにも多数取り上げられていたのですから、ウクライナの学生をネタに十分元はとったのではなかろうか。
好意的に考えれば、勢いで受け入れてみたら経営がいよいよ厳しくなったということかとも思います。こういうのって善意が暴走して、あとで辛いことになりがちなので、できる範囲のことをやるようにしたいもの。また、言葉が通じにくい分、すべて文書化しておくようにしたいもの。教訓です。
ウクライナの学生を迎え入れた他の学校でもトラブルは起きているかもしれないですが、表には出ていないと思います。学校も避けたいし、学生も相当のことがないと表立っては言わないでしょう。メディアも扱いにくい。でも、トラブルは外に出した方がいいと思います。教訓を得られますから。
サーカス団ダンサーのその後
以前はよく日本に避難してきているウクライナ人の話題を取り上げてましたが、報道自体が減ってしまったのと、同じようなケースを繰り返してもしょうがないので、しばらく間が空きました。
ウクライナ侵攻1年のタイミングで多数出ているので、いくつか取り上げておきます。
何度か取り上げたダンサーのイリナさんです。
マキシム君、大きくなったなあ。かわいい。
理想的な避難のひとつです。日本にいたことがあり、その時の職場が迎えてくれ、職住が準備されていて、つねに仲間が近くにいます。
エリザベータさんとバレンティン君
エリアで言えば名古屋が避難先としてはもっとも理想的。
エリザベータさんは結局イラストやデザインの仕事では食っていけなかったんですね。報道ではいつも「日本の知人を頼って」ということになってますが、日本人の彼氏なので、今は一緒に住んでいるんじゃないかな。
このワクチン接種会場では、YouTuberチャン・リリさんの弟バレンティン君も働いています。彼も日本語を話せる姉と日本人の夫と同居なので、日本語環境に恵まれていますし、バレンティン君も通ってていた日本ウクライナ文化協会による無料の日本語教室もあります。こういう団体が全力でサポートしているのも名古屋は安心。
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