モルドバ支配を狙うロシアから脱出する人々の行き先—ロシア人居住者に対する警戒心の薄いエリア-(松沢呉一)
ロシアの次のターゲット、モルドバ
2月初頭から、ゼレンスキー大統領が警告していたように、ロシアが今度はモルドバ支配を狙っています。
ウクライナ戦争で苦戦しているロシアにはモルドバに攻め込む余力があるとは思えず、もしそんなことになったら、こちらもNATOは支援するでしょうから、ロシア軍の力が分散するだけです。ロシアもそんなことは百も承知で、武力で支配するのではない方法を選択しているようです。
モルドバのマイア・サンドゥ大統領は、「ロシアは民間人を装った工作員を送り込んで、破壊工作をやるとの計画を立てている」と発表。
この読み通りに、2月下旬から、ロシアのオリガルヒとつながる親ロシア派の野党が主導して、反政府・反大統領デモが激化します。
掲げているテーマは政府のエネルギー法案に対する反対ですが、大統領に対する憎悪をことさらに煽ってます。
武力で侵攻するのでなく、反政府運動を高めて、親ロシア政権を樹立する計画か。すでにロシア支配下の沿ドニエストル共和国(トランスニストリア)があるので、そちらからの圧力も加えつつ。
この反体制運動を担っているのは、ロシア系住民であり、ロシア語話者たちです。こういう現実を知ると、ロシア語話者が国内にいることは怖く、ロシアからの移住者を各国が歓迎しないのはもっともだと思います。いかにプーチンに批判的な人物であろうとも。
ジョージアのロシア人
ジョージアのケース。
前にも書いたように、金を持ったロシア人が押し寄せてきて、おかげでジョージアに金が落ち、経済的には潤ってますが、アパートを所有しているわけではなく、飲食店やスーパーマーケットをやっているわけでもない人々にとってはあらゆるものが値上がりし、道路も渋滞し、ロシア語を頻繁に耳にするため、ロシア人やロシア語に対する嫌悪感が高まってます。
ロシアのテレビ局に勤務していた人物が、今はロシアの支配地域である南オセチアの監視やジョージアに逃げてきたロシア人の再教育をする団体で活動しているのが難しさをよく物語ります。
とくに動員令以降は「戦争反対、プーチン反対」の人たちだけでなく、「戦争を支持し、プーチンを支持するけど、自分は戦争に行きたくない」という人たちも国外に出ています。その人たちは食えている間はいいとしても、食えなくなったところに、ロシアの工作員が近づいて、「生活費を出してやるから、ジョージアの世論工作をやれ」と言われれば、協力するのが出てきます。そこまで至らなくても、ジョージアで生活する人々に対する意識が欠落しているのもいます。「金を落としてやるんだからいいだろう」と。その意識を変えておく必要があるわけですが、ジュージア人に対する蔑視は、ロシア人のロシア第一主義が背景にあるため、簡単には修正できない。それを少しでも緩和させるべくロシア人が奮闘しています。
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