松沢呉一のビバノン・ライフ

支持はしないけれど、政治家女子48党には注目せざるを得ない—クオータ制支持者を颯爽と乗り越える試み-(松沢呉一)

 

政治家女子48党に注目する

 

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ガーシーは除名か。と一応書いてみましたが、私はガーシーって人のことをよくわかっていないので、今まで触れたことがなく、あんまり興味もないです。

しかし、政治家女子48党には注目しています。

 

 

私が注目しているのは、名称変更になったN党全体ではなくて、もともとの政治家女子48党です。女の候補者を揃えた党。注目しているだけで支持するわけでも期待するわけでもないですが、個人として信頼できそうな候補がいたら投票します。個人がない金太郎飴の共産党よりも、政治家女子48党の候補者の方が投票する可能性がありそうです。

以前からさんざん批判しているように、「日本の女性議員率が低いのは男社会のせい」として「ともあれ女性議員率を挙げれば政治がよくなる、社会がよくなる」とする人たちがいて、中には「男が政治をやるから戦争になる。女性が政治をやれば平和になる」みたいなことを言う人までいます。頭おかしい。

こういう人たちが行き着くのは、クオータ制です。具体的には、政党単位で候補者の男女比を同数に近づける、比例順位を男女を交互にするといった方法で、女性議員率をいわば無理矢理に高める方法です。仁藤夢乃を支える会の中にも、クオータ制を主張する方々がおられます。

 

「女は能力が低い」という社会通念を固定するクオータ制

 

vivanon_sentenceたしかに世界各国でクオータ制は導入されていますが、必ずしも成功しているわけではありません。本来であれば当選するはずがなかったことが明らかになる方法で政治家になった場合は、そのレッテルがつきまといますし、何より怖いのは数合わせのために、適性のない政治家が増産されることです。

さらに、「女は能力が低いので、制度で下駄を履かせて、数字的平等を実現する」ということになって、「女は能力が低い」という社会通念が固定しますから、ヨーロッパ各国にはこれに反対しているフェミニストたちもいます。「生来の能力が低いわけではないが、差別のせいで、その能力を発揮できない」と言うかもしれないですが、だったらすべての被差別属性は同じく下駄を履かせて、人口比と同程度の議員数を確保できるようにしなければならないでしょう。LGBT、身体や精神の障害者、重大な病気がある人、低学歴者、低所得者、高年齢者、被差別部落出身者などなど。

クオータ制を女性だけに限っても、それだけのやる気と能力のある人材がいるという条件が整わないと悪い方向で結果が出てしまうため、私は「日本の女性議員率」シリーズで、「女性議員率が低いのは、立候補する女性が少ないためである」と数字を出して説明しました。それがいい結果をもたらしたと思えないですが、都民ファーストが女性候補を増やしたため、当選者も増加したのを見れば明らかです。男社会が女性議員増加を阻止しているのではなく、女たちが立候補しないことが数字を低く抑えているのです。

 

 

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