松沢呉一のビバノン・ライフ

「エア若年被害女性」に税金を投下するのはもう終わりにしましょう—歌舞伎町での一斉補導を正しく理解する[下]-(松沢呉一)

補導された30人のうち、家出少女は何人?—歌舞伎町での一斉補導を正しく理解する[中]」の続きです。

 

 

ハイジア周辺の街娼

 

vivanon_sentence本年度、Colaboは公的な助成金も、民間の助成金も打ち切られたようですが、仁藤夢乃は事実をそのまま表現することが苦手なので、本当かどうかは不明。もし本当だとすると、返還までは求められなかったにせよ、非常識な金の使い方の数々、適切な警備計画さえ出せなかったこと、それらは自分らの責任でしかないのに、あたかも東京都が悪いかのように抗議をしたことなどによるものです。民間企業だって、この団体に金を出した末に社の前で抗議されたらたまったものではないです。関わらないのが無難。

WBPCはいずれも不要であることが、もっともまともとも言われるColaboが自爆したことで明らかになったとも言えますが、仮に高額な飲食、高額なホテル代に公金を費やしていなくても、また、生活保護費の不正受給を指南した疑惑がないとしても、あの人たちの知見や姿勢では、救える人も救えないことを明らかにしておきます。

1990年代、ハイジア(大久保公園の南側)の脇にはアジア系売春婦が立ってました。多くは韓国人で、男娼もよくいました。韓国ではトランス差別が強くて、ニューハーフの店も少なく、日本に出稼ぎに来ているのが多いのです。その事情は今も変わらないと思いますが、ハイジア横ではいつの頃からか見かけなくなり、今現在、韓国系は新大久保のホテル街にチラホラいるだけです。つっても常時10人以上はいます。

2000年代に入ってしばらくしてから、ハイジア横でたまに日本人街娼を見ることがありましたが、一般の性風俗店では採用されないタイプです。顔だったり、体型だったり。コミュ障だとか、時間を守れないとか、精神面で性風俗店では敬遠されるタイプもいたかもしれない。

その数が増えて、ハイジアの西側から大久保公園側、ハイジアの東側に立つようになったのは、せいぜいここ3年くらいじゃないでしょうか。

全然話したことがないですが、今現在ハイジア周辺で売春している層は以前の「一般の性風俗店では採用されないタイプ」とは違って、また、トー横キッズとも全然違って、拙著『闇の女たち』で取り上げた広島市弥生町にいる子らに近いのではないかと想像しています。

街娼の高年齢化が進む中、20代が路上に立っている弥生町は特殊なエリアです。なぜそうなったのかと言えば、供給に比して。店舗型性風俗店の数が少なくて、細分化もなされておらず、今はわからないですが、あの頃は広島市には熟女店がありませんでした。次々と若いのが入ってくるので、20代半ばでもうヘルスでは働けなくなる。

そうすると、弥生町のホテトルと言われる業種で働く。東京のホテトルとは違い、アパートやマンションの一室で待機して、客引きが客を連れてくるのを待ちます。

そういった20代もいるのですが、ホテトルには高年齢の人もいます。顔が見えない分、まとめて「年配の人が多い」と思われていて、若い層は外に出て、顔を見せた方が稼げるのです。

という特殊事情があったのですが、「ビバノン」でも書いていた通り、コロナ禍によって全国各地の性風俗店では、常連を多数抱えている人気層を除いては全然稼げなくなって、スマホで客探しをしているという話をよく聞きました。そっちもそう簡単ではなくて、「いっそ外に立つか」になった人たちが出てきたのだろうと思います。スマホで探すよりも、顔を見て交渉した方が互いにとって話が早い。

ハイジア周辺には、少女はまずいないでしょう。補導されますよ。

売防法違反での摘発もあるようですが、売防法の適用は警察にとってけっこう面倒です。客に扮した捜査員に女から声をかけた場合は、ホテルに入ったところで「勧誘」で現行犯逮捕できますが、この方法以外では、客の証言を得なければならないため、捜査が厄介です。対して補導はすぐに可能。

 

 

同性間「パパ活」のトラブル

 

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警視庁のサイトに出ていた「令和04年度 第3回 新宿警察署協議会 議事概要」の「その他の意見要望等」に、こんな一文がありました。

 

委員から、LGBTQへの関心・話題が広まっている中、男性同士のパパ活トラ ブルへの対応について質問があったことから、新宿署管内では男性同士の取扱いはこれまで把握していない、今後発生する可能性があるので対応していく旨を説明し た。

 

この会は新宿警察署の管轄地域全体をカバーしたものであり、この話は新宿二丁目かもしれない。「男性同士のパパ活トラ ブル」だけでは若年層かどうかわからないですが、それも十分ありえると思います。

長期の休みになると、地方からやってきた中高生が二丁目に出没すると聞きます。自分が同性愛者やトランスジェンダーであることの自覚があって、しかし、そのことを誰にも言えず、新宿二丁目に行けば同類の人たちに会えたり、性欲を満たしたりできるかもしれないと期待してやってきます。

二丁目で会った人に「大人になったらまた来なさい」と諭されて家に帰るのもいるし、知らないおじさんの家にしばらく居候するのもいるようです。また、相手を探して街に立つのもいると聞きました。

この辺の話を詳しく教えてくれたのは「新宿二丁目に立つ男たち-男娼インタビュー」の彼です。あの彼も客を探すために立っていた新宿公園は、今は夜遅くは閉鎖されてしまい、アプリで客を探すのが主流です。アプリがあれば地元でも相手(相談でもセックスでも)を探せるので、以前ほどは家出までして二丁目に来るのは減っているかもしれず、その分、どんな街でもトラブルは起きます。

 

 

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