松沢呉一のビバノン・ライフ

なぜ共産党は身内の権利を死守しながら他人の権利には無頓着なのか—アンパンマンに続くボンカレーのパクリ-(松沢呉一)

 

著作権についての相談

 

vivanon_sentenceひさびさに著作権についての相談がありました。漫画を下地にしたデザインのグッズを作ろうとしていて、「著作権法にひっかかるかどうか」「ひっかかるとして訴えられる可能性があるかどうか」という内容。

ラフの段階のデザインを送ってもらったのですが、絵を使っているのではなく、タイトルの言葉とデザインを流用しているだけです。タイトルに著作権は通常発生してないですし、かぶっている言葉は一般名詞だけですから、タイトルを商標登録しているとしても問題なし。デザインに著作権はないので、訴えられても負けない。

漫画家はとっくに死んでいて、その漫画自体、30年も40年も前のものであり、絵がないですから、よっぽどのマニアじゃないとオリジナルに気づけないかと思います。私は読んでないので気づけませんでした。気づけたところで、悪意は感じられず。オマージュで済まされそうです。

著作権を継承しているのは遺族かプロダクションか知らないですが、こんなんで訴えるのはまずおらんです。面倒ですし、勝ち目が薄いです。

ただし、オリジナルと比較すると模倣したことは明らかです。オリジナルと間違えて購入することはあり得ないとしても、わずかな可能性ながら不正競争防止法にはひっかかり得ます。

しかし、少ロットのグッズですから、訴える方が金がかかります。権利者としても、裁判にするより穏便に済ませたいはずですから、クレームをつけてきた段階で販売中止にして、それまでの利益を全額渡せばええんでないか。そこまで至る可能性は低く、至ったとしてもこれで済む。

ざっとそういう話をして、ユルユル派の私としては「このままでいいんじゃね?」と伝え、相手も納得したようです。

 

 

他者の著作権を利用する場合にもっとも気をつけるべきは政治利用

 

vivanon_sentenceついでにこんな話をしました。

「気をつけた方がいいのは、政治利用だよね。オレが漫画家やイラストレーターだとして、どっかの政党が選挙活動でオレの絵を無断使用していたら、すぐに抗議するし、承諾を求められても断る。ゆるいパクリだとしても、それだけは気をつけた方がいい」

たとえば信用できる知り合いが選挙に出るとして、推薦文や応援演説を依頼してきたら引き受けることもありましょうが、作品を使われることには抵抗があります。それ相応のギャラが出て、オリジナルのキャラクターを描くのはまだいいかな。それ用に誕生したキャラですから。

しかし、政治的利用を前提としていないキャラをあとから政治利用に供するのは作者であってもキャラに申し訳ない。この申し訳なさは、自民党でも共産党でも公明党でも生じます。生じない政党はない。それが著作権法や不正競争防止法に抵触するか否かと無関係に、この申し訳なさが生じるのです。

この話をした時に共産党の多数の議員と候補者がボンカレーのパッケージを模した図版を選挙用にTwitterに出して、大塚食品が不快感を表明した件を教えました。彼は知らなかったものですから。

記事はこちら

このデザインは、共産党の支持者が作成し、そこに共産党の議員や候補予定者が乗ってきたもので、そのデザイン作成者はすでに丁寧な謝罪を出しています。

 

 

この謝罪には感心。

 

 

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