エルドアン再選とロシア人のビザ発給を厳しくし始めたトルコ—国外脱出したロシア人たちの苦渋[6]-(松沢呉一)
「公用語を話さない人々を甘やかしてきたラトビアの反省—国外脱出したロシア人たちの苦渋[5]」の続きです。
アルメニアのロシア離れ
ユーラシア経済同盟(EAEU/Евразийский экономический союз)の会議で、アルメニアのニコル・パシニャン(Նիկոլ Վովայի Փաշինյան)首相とアゼルバイジャンのイルハム・ヘイダル=オグル・アリエフ(İlham Heydər oğlu Əliyev)大統領が言い争い、プーチンが困惑したことが話題になってます。
アルメニアとアゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ(داغليق قاراباغ)を巡って対立し、3年ほど前にも殺しあってました。アゼルバイジャンはCSTO(集団安全保障条約機構)に加盟しておらず、CSTOの取り決めからすると、ロシアはCSTO加盟国であるアルメニアのために介入して、アゼルバイジャンと対峙することになっているのに、ロシアは放置。
以前からアルメニアは、これに対する不満を表明してましたが、ついにこのほど、CSTOからの脱退をほのめかすまでに。つっても、本気で脱退する気があるなら、とっとと脱退すればいいわけで、なおロシアに対して、「介入してよ」とのメッセージを送っていると見た方がよさそうです。さて、ロシアはどうするか。
というのがこの件の注目点ですが、ロシアのウクライナ侵攻以降、それまではそんなに注目されなかった地域に注目が集まっていて、世界地図の曖昧になっていたエリアが着実に鮮明になってきています。
アルメニアとアゼルバイジャンの北がジョージアとロシア。南がイラン。アルメニアの西がトルコ。
エルドアンが再選を果たす
そのトルコでの大統領選が注目されていましたが、これもロシアのウクライナ侵攻によって注目度が上がった事象です。
私も昨日の決選投票が気になって、朝方まで数字をチェックしてました。中継をやっていたチャンネルでは、なぜかどこも自動翻訳できない設定になっていて、まるで理解できないトルコ語を聴いていたのですが、対抗のケマル・クルチダルオール(Kemal Kılıçdaroğlu)に勝つだけでなく、過半数が必要なので、90パーセント以上が開票されてもなかなか当確が出ませんでした。
エルドアン陣営は早くから勝利宣言を出してましたが、開票が98パーセントを超えて、やっと当確が出たようです。
野党からは不正があったとの非難が出ていますが、投票や集計についての不正はまずないでしょう。それができるんだったら、一回目の投票でエルドアンが勝利していたはずですから。
ただ、ロシアがクルチダルオールのネガキャンをやっていたのは事実っぽい。仁藤夢乃や弁護団と同じ発想のロシア。いくつかの条件から、今回の大統領選ではネガキャンは有効だったと思われるので、なんも考えずに「私が貶せば票が減る」と思え込めた仁藤夢乃一派の傲慢ぶりとは違いますが。
プーチンとエルドアンは親密で、対してケマル・クルチダルオールはロシアに批判的。エルドアンは中国との関係も強めていて、ウイグル難民に対しても強硬路線を強め、同性愛者への弾圧も強めています。対してクルチダルオールは穏健な民主派路線。
そこを取り出すと、クルチダルオールの方がよさそうに思えますが、プーチンに直接意見を言えて、プーチンも無視はできないエルドアンの存在は貴重です。停戦をまとめられるとしたら、最適な人物はエルドアンでしょう。その実、ロシアとつながっていながら中立を装って漁夫の利を狙う中国ほど腹黒くはなさそうですし。
その存在感を重視するなら、エルドアンでも悪くはない。
ということで、私としてはどっちでもよかったのですが、ともあれその結果が気になっていたのは、やっぱりロシア関係での注目度がアップしたためだったろうと思います。
※トルコのCNNの中継。数字が変化していくのだけ観てました。
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