松沢呉一のビバノン・ライフ

ルカシェンコ政権は近々終わる/ロシア将校がバタバタ戦死している/飛行機工場へのゲリラ戦は失敗した模様/ロシアの山火事はさらに拡大/ほか-(松沢呉一)

 

 

ベラルーシのルカシェンコ独裁は間もなく終わりそう

 

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ロシア・ウクライナ関係が慌ただしくて、毎日更新しても追っつかない。私の興味は音楽やアートといった手段やパルチザンのような非正規抵抗運動だったりするので、そういうところだけを取り上げていればいいのですが、今は正規軍対正規軍についても見ておくしかない。

つうことで、今日の2本目は脈絡なく、気になっていることや出しそびれたことを出しておきます。

ベラルーシのルカシェンコ大統領がモスクワで開かれた対独戦勝記念日の式典を途中で切り上げて慌てて帰国、それ以来、姿を見せていなかったため、「入院して重篤な状態にある」「もう死んでいる」といった噂が流れていました。

これを払拭すべく昨日映像と写真が公開されています。

 

 

途切れ途切れに辛うじて声を出しているようにしか見えません。また、外で立っている様子は写真でしか公開されておらず、おそらく動画だと「立つのがやっと」という状態であることがばれるからでしょう。

これらの公開で、ごまかしようがないくらいに体が悪いことが明らかになって、かえって「長くないな」との声が高まってしまってます。

プーチンが死ぬと、混乱に陥って戦争をしている場合ではなくなる可能性もありますが、主戦派が代わりになって落ち着きそうです。今だとプリゴジンが有力ですけど、決して平和的ないい人なんかじゃないですから。悪くなることがあっても、よくはならない。

対してルカシェンコが死ぬと、民主化される可能性が高い。両国の決定的な違いは、民主化を臨む国民が2割程度しかいないロシアに対して、ベラルーシでは半分程度いることです。ベラルーシにはルカシェンコ路線の交代要員もそうはいないでしょう。

ただ、ロシア軍が大量に国内にいるため、混乱に乗じてベラルーシを占領したり、その力を背景にしてロシアに服従する政治家による傀儡政権を樹立する可能性もありそうです。ジョージア、モルドバ、バルト三国に侵攻することよりよっぽど簡単ではなかろうか。

というリスクがありますが、民主化が進んでロシア軍を追い出す可能性もあって、そうなるとロシア軍はウクライナ戦において不利になります。

次期大統領にもっとも近い存在である民主派のスヴィアトラナ・チハノウスカヤ(Святлана Георгіеўна Ціханоўская)が言うように、その時のための準備をしておく必要がありましょう。

ところで、プーチンと並ぶとルカシェンコの背の高さが際立ちます。182センチ。独裁者の身長コンテストで1位か?

追記:勢いで書いてしまいましたが、数日経って、より慎重な予想が出ていて、「ルカシェンコの病気はベラルーシに何をもたらすか—独裁終焉の可能性を探る」にまとめました。

 

 

ウクライナの攻撃に対する危惧

 

vivanon_sentenceウクライナは英国から提供された長距離ミサイル・ストームシャドウをすでに使用しているようです。ロシア領内の基地、弾薬庫、石油貯蔵庫、公官庁を狙うのはいいとして、ルハンシクに撃ち込んだのではないかと指摘されていて、これはどうなんか。工場が対象ですが、軍需工場でなければ、工場で働く人はただの工員。民間人の殺害になりはしないか?

床屋も爆破されています。

 

 

ロシア政府が指名した役人を狙ったようで、それ自体はいいとしても、それ以外の人たちも死傷したようです。いかにロシア語を母語とし、プーチンを信奉し、侵略を肯定していても、ウクライナ人にとっては、ロシア人ではなくて、ウクライナ人です。

私はロシア領内に攻撃を拡大することは、対象を絞る限りにおいて肯定できますが、対象を民間人に拡大することは肯定できません。戦争犯罪。ロシアと一緒になっちゃいかんよ。

 

 

ロシア軍の将校がバッタバッタと死んでいる

 

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バフムトでは拠点10ヶ所をウクライナ軍が奪還。ロシア軍は否定し、ウクライナ軍をすべて撃破と言ってますが、ウクライナ側の発表が正しそうです。

それを裏付けるように、第4電動ライフル旅団の指揮官ヴャチェスラフ・マカロフ(Вячеслав Макаров)大佐と陸軍軍団の副司令官エフゲニー・ブロフコ(Евгений Бровко)大佐の2名が戦死したとロシア国防省の報道官が発表。

ロシアが認めているわりにはあまり大きく取り上げられていないのですが、今までいくつかあったように部下に殺されたようなおかしな死に方ではく、激戦地での戦死です。

 

 

 

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